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医師人生のターニングポイント[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.83

高橋優二 (井上病院総合内科部長)

登録日: 2021-01-04

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人生にはいくつものターニングポイントがあるが、医師人生において間違いなくターニングポイントとなったのは医師5年目の時である。

まだまだ卒後ストレート研修が主流であった時代、学生時代は部活や遊びにと、学生生活を満喫していた私は、教授の魅力、医局の雰囲気等に引かれ、母校の耳鼻咽喉科に入局した。もともと町医者に憧れていた私には子どもから大人まで幅広い患者を診察することができるというのも魅力的であった。入局後も、同期と切磋琢磨しながら何不自由なく研修に励んだ。しかしながら、1つだけ予想外だったことがある。それは当直である。2年目以降になると、外病院での勤務が始まる。その場合、外科系当直、もしくは、病院の規模によれば1人で全科当直をしなければいけないこともあった。2年目で放射線科、3年目で麻酔科をローテートさせて頂いてはいたが、耳鼻咽喉科関連以外の疾患を対応するというのは大変なストレスであった。

そのような時、生協の本屋にある1冊の本をみつけた。「研修医当直御法度」、そのタイトルをみた自分は、これを読めば当直が苦でなくなるかな、と軽い気持ちで購入し読み始めた。すると、よくある当直マニュアルでなく、実体験に基づいた内容に引き込まれた。この先生がいる病院で1年でも研修させて頂ければ自分に自信を持てるのではないか。そう考えた自分は、Yahooで著者の先生の名前を検索し、H先生のメールアドレスをみつけることができた。H先生を通じてT先生の連絡先を教えて頂き、母校の耳鼻咽喉科の医局にもお願いし、1年間、F大学の救急総合診療部にてER研修を受けることができた。

浪人時代を除いて一度も長崎を出ることがなかった自分が、一度も訪れたことがないF県での研修、しかも、2人目が生まれたばかりで、生活的にも余裕がなかったこともあり、いろいろな苦労があったが、このF大学での1年間の研修は私の医師人生を大きく変えた。何よりも生涯の師と仰ぐT先生と出会えたのは、私の生涯の財産である。今も、少しでもT先生に近づけるように研鑽に励んでいる。

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