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特集:新型コロナウイルス流行下の感染症診療

No.5043 (2020年12月19日発行) P.18

宮上泰樹 (順天堂大学大学院医学研究科総合診療科)

森 博威 (順天堂大学大学院医学研究科総合診療科准教授)

内藤俊夫 (順天堂大学大学院医学研究科総合診療科主任教授)

登録日: 2020-12-18

最終更新日: 2020-12-16

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執筆:宮上泰樹(順天堂大学大学院医学研究科総合診療科)/森 博威(順天堂大学大学院医学研究科総合診療科准教授)/内藤俊夫(順天堂大学大学院医学研究科総合診療科主任教授)

内藤俊夫
1994年,名古屋大学医学部卒業。順天堂医院での臨床研修後,米国テンプル大学,メイヨークリニック感染症科に留学。順天堂医院にプライマリケア外来を開設。日本病院総合診療医学会理事,日本内科学会評議員,日本感染症学会評議員。

1 COVID-19と季節性インフルエンザ
(1)臨床症状からみたCOVID-19とインフルエンザとの鑑別
▶臨床症状からCOVID-19とインフルエンザの鑑別は難しい。COVID-19では,
・小児では症状が軽い。
・熱の期間が長いことが多い。
・味覚症状,嗅覚症状の頻度が高い。
・高齢者で重症化のリスクが高い。
(2)COVID-19とインフルエンザの画像所見の違い
COVID-19では,
・感染早期には淡いすりガラス陰影を呈するため,胸部レントゲン検査では異常を認めないことがある。
・呼吸器症状がなくても胸部CTで陰影を認めることがある。
・肺の抹消にすりガラス陰影を伴うことが多い。
(3)COVID-19とインフルエンザの診断について
・季節性インフルエンザの抗原検査は,発症直後は陰性となることが多い。
・COVID-19の迅速抗原検査はPCRに比べ感度が低い。
(4)鑑別のコツ
・インフルエンザの抗原検査は発症早期には陰性になるため,発熱者との接触歴や臨床症状,画像,検査所見を組み合わせて総合的に判断する。
(5)インフルエンザワクチン
・インフルエンザワクチン接種により,インフルエンザに罹患した際の重症度を低下させる。また,肺炎の罹患率,入院,死亡率を低下させる。
・今年は特にインフルエンザワクチン接種の呼びかけが必要である。

2 ウイルス感染症,細菌感染症,および免疫不全
(1)ウイルス感染症のデング熱(輸入感染症)に関して
・発熱,関節痛,発疹を呈する。五輪が開催された場合重要な鑑別疾患に挙がる。
(2)COVID-19と細菌感染に関して
・共感染は3.5%,二次感染は14.3%との報告がある。
・COVID-19診断時における細菌の共感染の可能性は低いため,むやみに抗菌薬を投与することは避けるべきである。
(3)COVID-19と鑑別が必要な呼吸器細菌感染症
・特に鑑別が必要な疾患として,非定型肺炎(マイコプラズマ,レジオネラ),結核,誤嚥性肺炎がある。
・咳嗽・喀痰等の臨床症状,既往歴,温泉や土壌との接触,嚥下機能の評価等,慎重に問診で聞き取りを行う。
(4)COVID-19と免疫不全
・HIV患者や固形臓器移植患者は,重症化のリスクが高い。
・日和見感染症としてニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス肺炎がある。
・宿主の免疫状態の評価(CD4陽性細胞数,IgG値,好中球数など),画像や各種検査による評価が必要となる。
(5)診断エラー
・COVID blindnessや,アンカリングバイアスを減らし見逃しを防ぐためにプロブレムリストや鑑別疾患リストの作成が重要である。
・個人の力に頼るのではなくシステム面から診断エラーを減らすよう取り組む。

3 患者の受診回避と医療従事者の感染対策/精神的影響
・急性期疾患,慢性期疾患ともに病院受診者,入院患者が減少している。診断,治療の遅れが懸念されている。
・医療従事者は手洗い,アルコール手指衛生に加え,ユニバーサルマスクポリシーを遵守する。軽度の症状が出た時点でCOVID-19の検査を検討し,出勤せずに経過をみること。
・COVID-19に伴う精神的影響を知り,向き合い,いつもと変わらない診療を心掛ける。
・今こそ病院総合診療医/家庭医的診療が大切である。

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