H市出身で鹿児島県のT島に在宅診療所を開設している者です。ご高齢の方たちを自宅・施設訪問して診療しております。
当地の介護施設ルールで島外から島内に帰ったときは2週間の自己自宅隔離を行っています。H市とT島を往復する必要がありますが,医師1人のため今年1月よりH市に帰っておりません。最近自費でPCR検査が可能になったのでH市に帰ろうと計画しています。
下記の2点につきまして,神戸大学医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎先生にご教示をお願い申し上げます。
1. PCR検査感度は検体採取が問題なくても30%平均の偽陰性があるのでしょうか?また,感染後翌日の検査の感度はウイルス量が少ないため100%近い偽陰性でしょうか?
2. たとえば,T島─H市間の旅程
金曜日:T島発,高速船・新幹線で当日H市着。
金〜日:H市滞在。
日曜日:H市から逆ルートでT島に。ホテルで自己隔離。
月曜日:午前中にPCR検査。
火曜日夕方:検査陰性を確認して島内を移動して自宅へ。自己隔離。
金曜日:もう一度PCR検査,陰性を確認。仕事に復帰を予定しています。
マスク,メガネ,手洗い,アルコール消毒,帰宅後洗顔などで感染を予防します。「H市で帰宅後,上着をその都度交換,ビニール袋に入れて保管」は感染の機会がなければ不要と考えています。
上記の日程で不要な事項,変更すべき点などアドバイスがございましたらご教示下さい。
(鹿児島県 O)
【PCR検査の「偽陰性率」は条件,情況によって大きく変化する。無症状であれば出張前後のPCR検査は不要と考える】
私の個人的なコメントです。執筆日は2020年9月15日です。私ならば,無症状であればH市出張前後でのPCR検査はいたしません。マスクと手指消毒には注意していただき,衣服の特別な管理は不要,自己隔離も不要と思います。
なお,検査の「偽陰性率」は「検査結果が陰性だった場合に偽陰性である可能性」と考えると,条件,情況によって大きく変化します。
ご指摘のPCR検査の感度については,先行研究からはおおむね正しい値の範囲(信頼区間の範囲内)とは思いますが,この話は煩瑣になりますので,可能ならば詳細は10月刊行の拙著『丁寧に考える新型コロナ』(光文社新書)をご覧ください。
【回答者】
岩田健太郎 神戸大学医学研究科感染治療学分野教授