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透析患者が安全に服用できる鎮痛薬は?

No.5035 (2020年10月24日発行) P.44

宇津 貴 (日本生命済生会日本生命病院腎臓内科主任部長)

登録日: 2020-10-23

最終更新日: 2020-10-21

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人工透析治療中の患者で,常時の頭痛を訴えるため,アセトアミノフェン(カロナール®)を処方していますが,服用しても効果がありません。頭痛の対策と透析患者が安全に服用できる鎮痛薬を教えて下さい。

(大阪府 C)


【回答】

【アセトアミノフェンが無効の場合,COX-2選択性NSAIDsを推奨する】

まず,透析条件の見直し,水・電解質の管理,血圧管理とともに,頭痛の原因となる疾患の除外診断を行うことが必要です。血液透析中に生じ透析終了後72時間以内に消失する頭痛は透析頭痛と呼ばれ,ナトリウム(Na)濃度異常や低マグネシウム(Mg)血症がそのリスク因子となります。血液透析患者では,血清Mg濃度は正常上限値とされる2.4mg/dLを超えた2.7~3.0mg/dLで死亡リスクが低いとの報告があります1)。過剰補正に留意しMg製剤の投与も考慮して下さい。高血圧や睡眠時無呼吸症候群,頭蓋内疾患,うつ病も頭痛の原因となります。

持続する一次性頭痛の中で最も一般的なのが筋緊張性頭痛で,日常的動作にて増悪しない,両側性である,悪心や嘔吐を伴わないなどの特徴があります。筋緊張性頭痛に対する急性期治療には,アセトアミノフェンおよび非ステロイド性消炎鎮痛薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)が推奨されていますが2),いずれの薬剤も「重篤な腎障害には禁忌」です。これらの薬剤を使用する際は「禁忌」であることを患者に説明し理解を得る必要があります3)。慢性透析患者に対しNSAIDsは,残存腎機能低下や消化管出血のリスクとなること,小腸出血・穿孔が生じることが知られています4)。そのため,第一選択薬には,アセトアミノフェン(500mg)が推奨されています2)

ご質問の症例のように,アセトアミノフェンが無効の場合,非選択性薬に比しエビデンスは劣りますが,消化管粘膜障害や血小板凝集抑制作用が軽度とされるシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)-2選択性NSAIDsをお勧めします。カフェイン併用は,依存性が危惧されるため,慎重に行うべきです。アセトアミノフェンとトラマドールの配合薬はエビデンスに乏しいものの,第二選択薬以降として考慮されます。両薬剤とも重篤な腎機能障害には禁忌であり,トラマドールは腎代謝を受けますので,投与時には十分な説明と腎機能に応じた減量が必要です。

緊張性頭痛の予防的薬物治療は,アミトリプチリンなどの抗うつ薬が推奨されています2)。アミトリプチリンは片頭痛にも予防効果を有し,腎不全でも減量の必要はありません。5~10mgの少量から開始し,口渇・便秘などに留意しながら増量,3カ月を目安に効果判定を行います。

いずれの頭痛薬によっても薬物乱用頭痛が生じることがありますので,漫然とした長期使用は避けるようにして下さい。

【文献】

1) Sakaguchi Y, et al:Kidney Int. 2014;85(1): 174-81.

2) 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会, 編:慢性頭痛の診療ガイドライン2013. 日本神経学会, 他, 監修. 東京書院, 2013.

3) 酒井佳奈紀, 他:日透析医学会誌. 2005;38(12): 1793-7.

4) 金崎雅美, 他:薬事. 2017;59(8):72-6.

【回答者】

宇津 貴 日本生命済生会日本生命病院腎臓内科主任部長

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