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痛風腎[私の治療]

No.5033 (2020年10月10日発行) P.38

大野岩男 (東京慈恵会医科大学総合診療内科客員教授)

登録日: 2020-10-10

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  • 高尿酸血症による腎障害は,①白血病などの治療の際(腫瘍崩壊症候群)や挫滅症候群などにおいて,大量の細胞破壊などによる急激な尿酸の産生増加により,腎からの尿酸排泄量が増加し尿酸結晶の沈殿物が尿細管腔の閉塞を起こし,時に急性腎障害に陥ることもある急性尿酸性腎症と,②高尿酸血症が長期間持続して尿酸塩結晶が尿細管および間質に析出・沈着することにより起こる慢性尿酸塩性腎症(痛風腎が代表疾患)に分類される。

    ▶診断のポイント

    結節性痛風や,腎機能に見合わない高尿酸血症を持つ罹病期間の長い痛風患者において,軽度蛋白尿,腎機能低下,最高尿浸透圧低下,高血圧などの典型的臨床所見を有し,腎生検にて腎に尿酸塩沈着や微小痛風結節を証明するか,または腎エコー検査でhyperechoic medulla(後述)を持つ病態を痛風腎と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    痛風腎の主因が腎髄質への尿酸塩沈着であることから,痛風腎では糸球体機能障害よりも髄質機能障害が生じることが多い。したがって,高度蛋白尿を呈する頻度は低く,クレアチニンクリアランス(Ccr)も,腎障害が進行してからでないと低下しない。痛風腎では尿濃縮能の低下が早期より認められることから,最高尿浸透圧や最高尿比重は低下してくる。

    痛風腎では,腎エコー検査において正常腎とは逆に,腎髄質が皮質よりも高いエコーレベルで描出されることが多く,hyperechoic medullaと呼ばれている。このhyperechoic medullaを認める場合は,痛風腎の診断根拠の1つになるとされている。また,尿酸塩沈着が腎髄質に限局的に認められることが多いため,腎生検にて腎に尿酸塩沈着を証明することは困難である。

    高尿酸血症,痛風の長い罹病期間と上記の臨床所見・検査所見などから痛風腎を診断する。痛風腎の鑑別診断としては,hyperechoic medullaを呈する腎髄質石灰化症(尿細管性アシドーシス,副甲状腺機能亢進症,Bartter症候群,pseudo-Bartter症候群など)が挙げられる。

    痛風腎の予防・治療には,高尿酸血症・高尿酸尿症の是正が重要となる。痛風腎では,尿酸排泄促進薬は尿酸排泄量を増加させ腎障害,尿路結石に悪影響を与える可能性があることから,尿酸生成抑制薬のアロプリノール,フェブキソスタット,トピロキソスタットを使用する。さらに,痛風腎の増悪防止および尿路結石の発症・進展抑制には,尿路管理が重要となる。尿路管理としては,尿中尿酸濃度を低下させるために低プリン食と尿酸生成抑制薬による尿酸排泄量のコントロール,および尿量の確保(1日尿量を2000mL以上に保つように飲水指導を行う)と,尿中尿酸の溶解度を上昇させるために酸性尿の是正(目標尿pH 6.0~7.0)が必要である。また,高尿酸血症治療以外の慢性腎臓病対策(慢性腎臓病のステージや病態に即した治療:塩分制限や蛋白質摂取制限に加えて,高血圧,体液過剰,代謝性アシドーシス,脂質異常症,高血糖,貧血に対する治療)を併せて行うことが重要となる。

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