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電気性眼炎(紫外線角膜障害)[私の治療]

No.5017 (2020年06月20日発行) P.46

庄司 純 (日本大学医学部視覚科学系眼科学分野臨床教授)

登録日: 2020-06-23

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  • 電気性眼炎は,溶接作業や殺菌灯などの人工光源から発生する紫外線による角膜上皮障害である。雪面の反射による紫外線で生じる角膜上皮障害は雪眼炎と呼ばれ,これらの紫外線による角膜上皮障害は総称して急性紫外線角膜炎と呼ばれることがある。紫外線は,長波長紫外線(A領域紫外線,UVA:波長320~400nm),中波長紫外線(B領域紫外線,UVB:波長290~320nm),短波長紫外線(C領域紫外線,UVC:波長200~290nm)に分類される。太陽光が地表に到達するまでの間にオゾン層などでUVCはほぼ吸収されてしまうため,雪眼炎は主にUVBで生じる角膜上皮障害である。また,溶接光や人工光源にはUVCが含まれているため,電気性眼炎は紫外線の中で最も細胞障害性が強いUVCにより角膜上皮障害を生じるとされている。
    角膜が紫外線による曝露を受けた後,上皮障害が生じて上皮が脱落し,眼痛などの自覚症状が発現するまでに10時間前後を要する。したがって,電気性眼炎は,紫外線の曝露より8〜10時間の潜伏期をもって発症するため,昼間の溶接作業が原因の場合には,夜間に急に眼痛が出現して発症する。電気性眼炎の症状は,自覚症状として強い眼痛,異物感,霧視,流涙を訴え,他覚所見としては点状表層角膜炎を中心とした角膜上皮障害に結膜充血,球結膜浮腫,眼瞼腫脹,眼瞼痙攣,縮瞳などを伴う。眼瞼皮膚には日焼け様の発赤を伴うことがある。雪眼炎では,昼間の雪面からの紫外線曝露が1.5〜2時間程度続くことで発症するが,角膜上皮障害の程度は電気性眼炎よりも自覚症状,他覚所見ともに軽症で,潜伏期も長い。

    ▶診断のポイント

    電気性眼炎は,原因となる紫外線曝露を問診により確定させることが診断につながり,他の角膜上皮障害を生じる疾患との鑑別診断となる。角膜所見は,まず点眼麻酔薬を使用して開瞼し,細隙灯顕微鏡により点状表層角膜炎の有無を確認する。フルオレセインを用いた生体染色(図)では,フルオレセインで点状に染色される上皮欠損として観察されるが,点状染色所見の密度と範囲とにより上皮障害の重症度を推定する。角膜上皮障害に伴う眼瞼浮腫,結膜充血,結膜浮腫の程度からも重症度を判定することが可能である。高度の炎症を伴う場合には眼瞼痙攣や縮瞳を伴う。

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