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ケロイド・肥厚性瘢痕[私の治療]

No.5010 (2020年05月02日発行) P.47

茂木精一郎 (群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学准教授)

登録日: 2020-05-01

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  • 外傷や手術などの創傷治癒の過程に起きる異常で,膠原線維の過剰増生を生じた状態である。境界明瞭な紅色あるいは褐色の扁平隆起した増殖性病変を呈する。

    ▶診断のポイント

    ケロイドは創部の範囲を越えて広がり続ける異常な瘢痕である。境界明瞭な扁平隆起~半球状隆起し紅色~褐色の病変で,徐々に側方に進行する。瘙痒感と側圧痛(横からつまむと痛い)を伴う。下床に軟骨・骨のある部位で,皮膚に張力がかかりやすい部位である前胸部,顔面,上腕,背部に好発する。

    肥厚性瘢痕(hypertrophic scar)は創部の範囲を越えないで垂直方向に増殖する瘢痕と言われている。ケロイドに比べて隆起,紅色調が少なく,側圧痛も少ない。通常,肥厚性瘢痕は受傷後6カ月程度で最も隆起し,その後は徐々に改善し平坦化する。一方でケロイドは,病変が長期間にわたり持続する。

    ケロイド・肥厚性瘢痕のリスクとして,細菌感染や異物反応,外傷などによる遷延する炎症,尋常性痤瘡などの皮膚の炎症性疾患,外力,などが挙げられる。ケロイド形成のしやすさは個人の体質や人種が関与している。白人はほとんどケロイドを生じないが,黒人はケロイドを形成しやすい。熱傷,外傷後や手術後など,はっきりした既往がある場合が多いが,突然発生する場合もある。

    鑑別が必要となるのは皮膚線維腫,隆起性皮膚線維肉腫などである。鑑別には生検による組織診断が必要であるが,生検によって新たな瘢痕・ケロイドを生じる可能性があるため,注意する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ケロイド・肥厚性瘢痕は,治療に対する反応性が異なることに留意する。

    治療が必要なのは,整容的な問題やかゆみ,疼痛を伴う場合,拘縮による運動障害が生じた場合などである。基本的にはステロイド外用,圧迫療法,ジェルシートでの固定など,保存的治療を第一に考える。単純に切除すると,より大きなケロイドとして再発する可能性が高い。「形成外科診療ガイドライン2(急性創傷/瘢痕ケロイド)」においては,病変部切除後の放射線照射,ステロイド局所注射療法が高い治癒効果が期待できる方法として示されており,レーザー照射や凍結療法は根拠に乏しいとされている。予防および治療後の再発抑制に対してはトラニラスト内服が有効である。

    【全身療法】

    トラニラスト(リザベン®)は抗アレルギー薬の中で唯一,本疾患の適応を有する。炎症性細胞からのケミカルメディエーターやサイトカインの遊離を抑制し,ケロイドおよび肥厚性瘢痕由来線維芽細胞のコラーゲン産生を抑制する効果や,痛みやかゆみを軽減させる効果を持つ。予防も含めて,ケロイド・肥厚性瘢痕に対して内服処方する。急性効果は期待できないことを説明する。外来で長期処方する場合は,膀胱炎症状,肝機能異常に注意する。

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