株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

免疫不全症と造血不全症の遺伝的素因

No.5007 (2020年04月11日発行) P.50

小野宏彰 (九州大学小児科)

石村匡崇 (九州大学小児科助教講師)

大賀正一 (九州大学小児科教授)

登録日: 2020-04-10

最終更新日: 2020-04-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【近年,原因遺伝子が次々と見出されている】

原発性免疫不全症候群(PID)と遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は,多彩で稀な単一遺伝子病の一群である。近年,遺伝子解析技術の進歩から原因遺伝子が次々と見出された。根治療法の造血幹細胞移植成績は向上し,遺伝子治療の臨床試験も始まっている。PIDとIBMFSは,それぞれ易感染性と血球減少を呈する小児特有の疾患と考えられてきたが,同じ遺伝子異常で症候が重複する例や,非典型的な成人発症例が見つかるようになった。

PIDには350以上の原因遺伝子が見出されている1)。国内の推定患者数は2900人,有病率は2.3/10万人だが,多くの未診断患者がいると考えられる2)。自己免疫疾患や悪性疾患と関連するため,早期診断が生命予後とQOLを向上させる。IBMFSも進行する血球減少から診断され,同様に免疫異常や悪性疾患と関連する。ファンコニ貧血はDNA損傷修復機構障害で染色体脆弱性を示す。先天性角化不全症はテロメア複製維持障害があり,重症型は乳児期から重症感染症を起こすが3),軽症型は成人で貧血,皮膚異常や発がんから診断される。

近年,クリニカルシーケンスにより個別化医療を実現する環境が急速に整いつつある。稀な遺伝性疾患の研究が,体質とされてきた問題の説明と解決にせまる時代になった。このような時代にこそ,鋭い観察眼と優しいまなざしで長く家族に寄り添うことが我々臨床医の役割であろう。

【文献】

1) Picard C, et al:J Clin Immunol. 2018;38(1):96-128.

2) Ishimura M, et al:J Clin Immunol. 2011;31(6): 968-76.

3) Ohga S, et al:Eur J Pediatr. 1997;156(1):80-1.

【解説】

小野宏彰,石村匡崇*1,大賀正一*2  九州大学小児科 *1助教講師 *2教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top