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■NEWS 【米国心臓病学会(ACC)】神経体液性因子に介入することなく、またもやHFrEF例の転帰を改善:ランダム化試験“VICTORIA”

登録日: 2020-04-07

最終更新日: 2020-04-07

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3月28日から3日間、新型コロナウイルス流行のため、Web上のみで開催された米国心臓病学会学術集会(ヴァーチャルACC)において、収縮障害心不全(HFrEF)例の予後を改善する新たな薬剤が報告された。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を刺激するベルイシグアト(vericiguat)である。

sGCは、心血管系保護的に作用する一酸化窒素(NO)の受容体として知られている。そのためベルイシグアトは、HFrEF例におけるNO合成低下が一因となる「左室リモデリング」や「後負荷増大」などに対する、改善作用が期待されていた。そして今回、5000例以上のHFrEFを登録したランダム化試験“VICTORIA”において、プラセボに比べ「心血管系(CV)死亡・心不全入院」を相対的に10%減少させることが明らかになった。Late breakingセッションにて、Paul W. Armstrong氏(アルバータ大学、カナダ)が報告した。

VICTORIA試験の対象は、近時の心不全増悪既往を有し、標準治療にもかかわらず、左室駆出率(EF)<45%のNYHA分類Ⅱ-Ⅳ度心不全5050例である。日本からも319例が登録された。全体の平均年齢は67.5歳、女性は24%のみだった。EF平均値は29.0%、41.4%がNYHA分類Ⅲ/Ⅳ度だった。薬剤、デバイスとも、心不全治療は十分に行われていた。

これら5050例はベルイシグアト1日1回服用群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。

中央値10.8カ月の観察期間中、1次評価項目である「CV死亡・心不全入院」の発生率は、ベルイシグアト群:35.5%、プラセボ群:38.5%となり、ベルイシグアト群における有意なリスク低下が認められた(ハザード比 [HR]:0.90、95%信頼区間 [CI]:0.82-0.98)。両群の発生率曲線は、試験開始の3カ月後から解離していた。またArmstrong氏は「プラセボ群のイベント発生率がきわめて高かった」と述べている。1次評価項目を1例減らすのに必要な治療者数(NNT)は1年間で24例だという。なお、CV死亡のみのHRは0.93(同:0.81-1.06)、総死亡もHR:0.95(同:0.84-1.07)で有意差とはならなかった。一方、「全心不全入院」のHRは0.91(同:0.84-0.99)と、ベルイシグアト群で有意なリスク低下を認めた。

事前設定されたサブグループ解析では、「若年(75歳の上下)」、「NT pro-BNP高値」で 1次評価項目リスク低下作用の増強が認められた。NT pro-BNPとのより詳細な関係は、現在解析中だという。

重篤な有害事象の発現率は、両群間に差を認めなかった。

指定討論者であるLynne W. Stevenson氏(ヴァンダービルト大学、米国)は、VICTORIA試験が対象とした「近時に心不全増悪既往のある例」は、これまでの多くのHFrEF対象臨床試験から除外されてきた、より病期として晩期にある患者であると指摘。このような高リスク例への新たな介入法が加わった点を高く評価していた。

本試験は、Merck Sharp & Dohme Corpの出資によって行われた。また報告と同時に、NEJM誌にオンライン公開された。

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