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慢性活動性EBV感染症[私の治療]

No.5004 (2020年03月21日発行) P.44

木村 宏 (名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学教授)

新井文子 (聖マリアンナ医科大学血液・腫瘍内科教授/東京医科歯科大学血液疾患治療開発学教授)

登録日: 2020-03-22

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  • 遷延あるいは再発する発熱,肝障害などの伝染性単核症様症状を示し,末梢血および病変組織に高レベルのEpstein-Barr virus(EBV)が検出される疾患である。通常B細胞を標的とするEBVが,T細胞あるいはNK細胞に潜伏感染し,感染細胞が増殖し活性化した結果,臓器に浸潤・高サイトカイン血症に伴う全身の炎症を生じ発症するT/NK細胞リンパ増殖性疾患と位置づけられている。明らかな免疫不全のない小児・若年成人に発症するが,近年,高齢者を含む成人例の報告が増えている。

    ▶診断のポイント

    診療ガイドラインにより,本症の診断には,以下の4項目を満たすことが定められている。

    ①伝染性単核症様症状が3カ月以上持続(連続的または断続的)

    ②末梢血または病変組織におけるEBVゲノム量の増加

    ③T細胞あるいはNK細胞にEBV感染を認める

    ④既知の疾患とは異なること

    【症状】

    発熱,リンパ節腫脹,肝脾腫,発疹,貧血,血小板減少,下痢,下血,ぶどう膜炎,冠動脈瘤などの症状がある。時に,種痘様水疱症,蚊刺過敏症といった皮膚症状を合併することがある。

    【検査所見】

    末梢血中あるいは組織中でEBV感染細胞が増えていることを,リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法によるEBV-DNA定量(2018年より保険収載),もしくは組織のin situ hybridization法で示す。同時に,EBVがT細胞もしくはNK細胞に感染していることの証明が必要であるが,実施できる施設は限られているため,専門施設に依頼する。また,EBV関連抗体価のVCA-IgG,EA-IgGが高いことが多いが,抗体価高値は診断上必須ではない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    長期的予後は総じて不良であり,感染を契機に血球貪食症候群を生じたり,節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型,aggressive NK細胞白血病,末梢性T細胞リンパ腫・非特定型に進展したりするので,移植を念頭において治療にあたる1)。8歳以上の発症,肝障害合併例は予後不良である。また,診断から移植までの期間が長い患者では,臓器障害に起因する移植関連合併症の発症や死亡率が高い。皮膚症状のみのもの(種痘様水疱症・蚊刺過敏症)に対しての移植の必要性・時期については,コンセンサスは得られていないが,繰り返す発熱・肝障害などの活動性のある患者に対しては,早期の移植が勧められる。化学療法のみで感染細胞の消失を認めることは一部の例外を除き,ないと考えるべきである。

    【注意】

    EBV感染T/NK細胞は多剤耐性遺伝子産物であるP糖蛋白質を発現していることが多く,通常の化学療法に抵抗性である。また,化学療法により病勢が一気に加速し,血球貪食症候群に至ることもあるため,本疾患の治療にあたっては経験の豊富な専門施設に患者を紹介することが望ましい。

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