脳主幹動脈閉塞に対する血管内治療(経皮的脳血栓回収術)追加の有用性は確立されている。ではtPA静注を省き、より早期に血管内治療を始めればさらに転帰は改善するだろうか。この問いに答えるべく、わが国の研究者が取り組んだのがランダム化試験“SKIP”である。2月19日からロサンゼルスで開催された国際脳卒中学会(ISC)において、鈴木健太郎氏(日本医科大学脳神経内科)が報告した。「tPAスキップ」血管内治療は、「tPAあり」に対する非劣性を証明できなかった。
SKIP試験の対象は、内頸動脈、ないし中大脳動脈本幹に閉塞を認め、「発症前修正ランキンスケール(mRS)≦2」かつ「発症直後NIHSS≧6」で、「ASPECTS≧6点、またはDWI ASPECTS≧5点」の、発症から穿刺までが4時間以内だった204例である。tPA静注なしで血栓回収術を行う「直接血管内治療」群(101例)と、tPA施行後に血栓回収術を行う「ブリッジング」群(103例)にランダム化され、90日間追跡された。
その結果、1次評価項目である「90日後mRS:0-2」の達成率は「直接血管内治療」群:59.4%、「ブリッジング」群:57.3%で、有意差はなかった(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.63-1.90)。この結果は、年齢、性別、心房細動の有無、ASPECTSの高低、動脈閉塞部位など別に比較しても同様だった。
このように「90日後mRS:0-2」達成率は「直接血管内治療」群の方が高かったものの、OR下限が、非劣性マージンである「0.74」を下回ったため、「ブリッジング」群に対する「非劣性」は証明されなかった(ITT解析)。プロトコール遵守例のみで検討しても、同様だった。
一方、36時間以内の全頭蓋内出血は、「直接血管内治療」群:34%、「ブリッジング」群:50%と、「直接血管内治療」群で有意なリスク減少を認めた(ハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.28-0.88)。ただし「症候性」頭蓋内出血に限ると、両群間に有意差はなかった。なお、また2次評価項目である「90日間死亡」に、両群間で有意差はない。
「直接血管内治療」群における「非劣性」が認められなかった理由として、鈴木氏は両群とも再開通率が非常に良好だった点を挙げた。両群とも90%を超えていたという。また興味深いことに、本研究では血管内治療開始までの時間に、群間差は認められなかった(tPAによる遅延認めず)とのことである(ISCインタビューでの発言)。