2月19日からロサンゼルス(米国)で開催された国際脳卒中学会(ISC)において、わが国で行われたランダム化試験“CAS-CARE”が発表された。血管平滑筋増殖抑制などを介したステント再狭窄抑制作用が期待されたシロスタゾール追加による、頸動脈ステント留置例のステント再狭窄抑制を比較した試験だが、非追加群との間に有意差は認められなかった。山上 宏氏(国立循環器病研究センター)が報告した。
CAS-CARE試験の対象は、40~80歳で、30日以内にステント留置が予定されている、狭窄度50%以上の症候性頸動脈狭窄、または狭窄度80%以上の無症候性頸動脈狭窄631例である。心不全例は除外されている。平均年齢は70歳、症候性狭窄例は48%、42%に脳梗塞既往があった。
これらはシロスタゾール以外の抗血小板薬を服用する群(非シロスタゾール群)と、それらにシロスタゾール100~200mg×2/日を併用する群(シロスタゾール群)にランダム化され、非盲検下で2年間追跡された。シロスタゾール群では、アスピリン(66% vs. 85%)、クロピドグレル(60% vs. 80%)とも、服用率は有意(P<0.001)に低かった。
その結果、1次評価項目である2年間のステント再狭窄(50%以上狭窄)の発生率は、シロスタゾール群:10.8%、非シロスタゾール抗血小板薬群:19.6%で、シロスタゾール群におけるハザード比は0.64と低値なれど、有意差とはならなかった(95%信頼区間[CI]:0.41-1.02)。
また、2次評価項目の1つである心血管系イベント(脳卒中・一過性脳虚血発作、心筋梗塞、大動脈解離、動脈瘤破裂、肺塞栓症、末梢動脈疾患)・全死亡の発生率も、シロスタゾール群の6.2%に対し、非シロスタゾール抗血小板薬群では6.7%と、こちらも有意差は認められなかった。脳梗塞(シロスタゾール群:3.4% vs. 非シロスタゾール抗血小板薬群:2.6%)、脳出血(同:1.2% vs. 1.0%)も同様に有意差はなかった。
なお、「頭蓋内出血・輸血を要する出血」の頻度は、有意ではないが、シロスタゾール群で2.2%と、非シロスタゾール抗血小板薬群の1.3%よりも高値となっていた。
山上氏は本試験の限界の1つとして、登録症例数が当初予定されていた900例の8割弱にとどまった点を挙げていた。
本試験は、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構内の、医療イノベーション推進センター(TRI)から資金提供を受けて行われた。大塚製薬株式会社はTRIに研究資金を寄付したが、本試験には一切関係していないとされた。