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【識者の眼】「中高年のひきこもりは不登校から始まっている?」石﨑優子

No.4997 (2020年02月01日発行) P.58

石﨑優子 (関西医科大学小児科学講座准教授)

登録日: 2020-01-29

最終更新日: 2020-01-28

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2019年3月、内閣府は「生活状況に関する調査(2018年度)」で、自宅に半年以上閉じこもっている「ひきこもり」の40〜64歳が、推計61.3万人との調査結果を発表した。この結果を受けてメディアは、①ひきこもり期間は7年以上が半数と長期化している、②2015年度の15〜39歳を対象にした調査の54.1万人より多い、③2つの調査結果を合計すると国内のひきこもりが100万人に達している可能性がある─と伝えた。この調査に関しては、80代の親が50代のひきこもりの子どもを支える『8050問題』や、定年退職後にひきこもるケースがあることが注目を集めた。しかし小児科医としての眼は、ひきこもり期間30年以上が約4万人(6.4%)いることにひきつけられる。これは小児・思春期から中高年まで継続してひきこもっている可能性を示唆している。そしてこの数字は40歳以上のみであり、15〜39歳の中にも、当然小児期からの不登校に始まるひきこもりは含まれているであろう。

一方、2019年10月発表の文部科学省「2018年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小・中学校の不登校数は16.5万人と、少子化の進行にもかかわらず年々増え続けている。これまで、不登校児への対応は「登校刺激を控えて見守る時期も必要」とされていたが、何もせずに見守ると中高年まで続く可能性があるとすれば、どうすればよいのか。2019年10月の文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」では、学校に登校することのみを目標とせず、フリースクールなどの民間施設やNPO等の機関の利用を勧めている。これを教育の後退のように捉える向きもあるが、今はそれを問う状況ではないであろう。中高年のひきこもりと小・中学校の不登校の数字から、日本全国で学校に行けない子どもが出ていく場所が必要であることを認識して頂きたい。

石﨑優子(関西医科大学小児科学講座准教授)[小児科][不登校]

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