大動脈解離(aortic dissection:AD)は突然に発症する致死的な疾患であり,大動脈壁が中膜レベルで長軸方向に裂け,真腔と偽腔の二腔が発生し,破裂と虚血による様々な続発症を呈する。急性ADと大動脈瘤破裂を「(広義の)acute aortic syndrome」と称し,重篤な急性疾患群として注目されている。解剖学的に,上行大動脈に解離があるスタンフォードA型と,解離のないB型があり,偽腔の状態により偽腔開存型,UPL型,偽腔閉塞型にわけられる。また,時期的に急性(~2週),亜急性(2週~3カ月),慢性(3カ月~)に分類される。
多くが突然の胸背部痛で発症する。心タンポナーデや破裂によりショックに陥ることが多い。分枝灌流障害(malperfusion)を伴えば,心停止(冠動脈),意識障害(脳血管),腹痛(腹部分枝),下肢虚血(下肢動脈)などをみる。
①超音波検査:疑診の段階で,心エコーで大動脈内フラップ,心囊液貯留・心タンポナーデ,大動脈弁閉鎖不全,冠動脈malperfusionを評価する。血管エコーで頸動脈,腹部分枝,下肢動脈の灌流状態も評価する。
②CT検査:単純CTでも診断可能であるが,造影CT検査によりADの局在・範囲,偽腔開存の有無,内膜裂孔の部位,分枝の開存状況,破裂(血腫)の有無を評価する。
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