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吸収不良症候群(腸内細菌異常増殖症候群,盲係蹄症候群など)[私の治療]

No.4990 (2019年12月14日発行) P.45

穂苅量太 (防衛医科大学校消化器内科教授)

登録日: 2019-12-17

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  • 吸収不良症候群には,栄養素の消化・吸収・輸送の3段階に基づいた病態分類がされる。糖質・蛋白質・脂質の3大栄養素のほか,ビタミン・電解質・ミネラルなど微量栄養素を含む多彩な欠乏症状が想定される。吸収不良症候群で最も障害を受けやすい栄養素は脂肪であるが,腸内細菌異常増殖症候群(small intestinal bacterial overgrowth:SIBO)に伴う吸収不良症候群は特殊な機序で吸収障害が起きるため,欠乏する栄養素も特徴的なことが多い。
    SIBOは小腸における細菌の量的な過剰増殖と質的な異常増殖を指し,臨床症状のひとつとして消化吸収障害から吸収不良症候群がある。
    SIBOをきたす疾患として最も頻度が高いのが手術後であり,盲係蹄症候群は器質的・機能的障害により小腸内容が停滞し,腸内細菌叢が異常増殖し,脂肪やビタミンB12(B12)を中心とする栄養素を摂取(steal)し,欠乏症状をきたす。
    手術に伴うものではBillroth Ⅱ法の輸入脚,側端吻合によるself-filling typeの盲嚢,端側吻合によるself-emtying typeの盲嚢,側側吻合によるバイパスされた盲環,回盲弁の切除が,代表的なものである。ほかに,小腸憩室症,狭窄,部分閉塞,上部と下部腸管の内瘻などが一因になる。手術後以外では糖尿病性神経障害に伴う蠕動運動障害,全身性強皮症,アミロイドーシス,甲状腺機能低下症,特発性偽性腸閉塞に関連した腸管運動障害,が原因となる。高齢者では,無酸症が原因となる場合がある。細菌叢が産生する葉酸やビタミンKは欠乏しない特徴がある。

    ▶診断のポイント

    手術既往の有無が重要である。X線検査や内視鏡によるblind loopの証明を行う。細菌異常増殖を直接証明することは困難で,抗菌薬内服の診断的加療を行う場合も多い。

    〈D-キシロース吸収試験〉

    単糖であるキシロースは経口投与により空腸で吸収され,約60%が体内で代謝され,残り40%が代謝されずに尿中に排泄される。排泄量は血中濃度に比例し,小腸の機能的吸収面積を示す。SIBOでは細菌の異常増殖によりキシロースが分解されるので異常低値となることがある。早朝空腹時に排尿後,D-キシロース25g溶液を服用後,5時間まで全尿を集める。正常排泄量は5~8g(20~32%)以上である。

    〈ビタミンB12吸収試験〉

    回腸の吸収能を反映する。食物中のB12は蛋白と結合しており,胃でペプシンによる分解を受けて遊離型B12となった後,唾液に含まれるR蛋白と結合し,胃酸から保護される。空腸で膵プロテアーゼにより遊離型になったB12は内因子と結合し,回腸末端から吸収され全身の臓器に運ばれる。

    ヒト胃液結合57CoB12カプセルと遊離58CoB12カプセルを同時に経口投与し,2時間以内に多量の非放射性B12を筋注する。B12が飽和状態になっていると,経口投与された57CoB1258CoB12は腎より尿中に排泄されるので,24時間に排泄される両Coを測定し障害部位を推測する。悪性貧血では57Coが58Coより高値であり,回盲部切除のような腸管が原因の吸収不良では両値とも低値となる。SIBOでは抗菌薬の投与により吸収が改善する。

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