株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

腸管ベーチェット病/単純性潰瘍[私の治療]

No.5259 (2025年02月08日発行) P.42

久松理一 (杏林大学医学部消化器内科学教授)

登録日: 2025-02-06

最終更新日: 2025-02-04

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • ベーチェット病(Behçet’s disease:BD)は,①再発性口腔内アフタ,②皮膚症状,③眼症状,④外陰部潰瘍を主徴候とする難治性全身性炎症性疾患である。指定難病であり,特定疾患医療受給者数からみた患者数は1万9147人(2013年3月末時点)である1)。BDの3~16%に消化管病変が合併する。腸管BDの定型的な回盲部の潰瘍病変はフラスコ型と称されるUl-Ⅳの深い潰瘍で,穿孔や穿通のリスクを伴う。

    ▶診断のポイント

    腸管BDはBDの一病型として位置づけられ,神経型,血管型とともに特殊型に分類される。厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究班の診断基準に基づいて,完全型あるいは不全型BDの基準を満たし,かつ回盲部の定型病変を認める場合に腸管BDと診断される。各症状は同時に出現する必要はなく,病歴の中で出現したことがあればカウントされる。

    単純性潰瘍は「回盲部近傍の慢性打ち抜き様の潰瘍」「境界明瞭な円形ないし卵円形で下掘れ傾向が強く,回盲弁上ないしその近傍に好発し,組織学的には慢性活動性の非特異性炎症所見を示すUl-Ⅳの潰瘍」と定義される。

    腸管BDと単純性潰瘍を内視鏡所見あるいは病理所見で鑑別するのは困難であり,両者の鑑別は腸管外症状の有無でなされる。単純性潰瘍と診断されたのち腸管外症状が出現し,腸管BDの診断がつくことはありうる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    腹部症状が無症状あるいは軽症で内視鏡所見も軽度の症例に対する薬物治療のエビデンスは少ないが,5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やサラゾスルファピリジンの有効性が報告されている。もし無投薬で経過観察する場合は,定期的にCRPなどの炎症マーカーでフォローし,腸管外症状の出現にも注意する。

    中等症以上の自覚症状を伴い,内視鏡的にも典型的な深掘れ潰瘍が存在する場合は,副腎皮質ステロイドまたはTNF阻害薬(アダリムマブ,インフリキシマブ)の適応である。副腎皮質ステロイドは多くの使用経験に基づいた実績があり,中等症以上の寛解導入治療としては今もって第一選択となりうる。一方,維持投与による再燃予防のエビデンスはなく,副作用の観点から副腎皮質ステロイドの長期使用は可能な限り避けるべきである。TNF阻害薬は日本国内で臨床試験が行われ,有効性が確認されている。速やかな臨床症状の改善に加え,継続投与による寛解維持効果,さらに内視鏡所見の改善も期待できる。

    残り1,706文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top