株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

Peutz-Jeghers症候群[私の治療]

No.5258 (2025年02月01日発行) P.41

矢野智則 (自治医科大学内科学講座消化器内科部門教授)

登録日: 2025-01-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • Peutz-Jeghers症候群(Peutz-Jeghers syndrome:PJS)は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする稀少疾患(出生5万〜20万に1人)で,常染色体顕性遺伝形式をとる。
    ポリープのがん化は稀だが,ポリープによる腸重積や腸閉塞,貧血,低蛋白血症が問題になる。近年はバルーン小腸内視鏡によるポリープ治療が普及してきた。
    消化管,乳房,子宮,卵巣,精巣,膵臓,肺などの悪性腫瘍リスクが高く,適切なサーベイランスが必要である。

    ▶診断のポイント

    STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体顕性遺伝性疾患だが,発症者の17〜50%は家族歴のない孤発例である。腹部症状を呈する患者で口唇・指尖等に色素斑を認めれば,家族歴がなくても鑑別疾患に挙げる必要がある。

    色素斑は出生時には目立たず,5歳以前に発生し思春期まで増加する。成人すると目立たないか,美容目的のレーザー治療により消失している場合もあるが,頰粘膜には残りやすい。

    本症候群の過誤腫性ポリープは粘膜上皮の過誤腫的過形成,粘膜筋板からの平滑筋線維束の樹枝状増生を特徴とし,Peutz-Jeghersポリープと呼ばれる。有茎性・亜有茎性ポリープが多く,肉眼的にも樹枝状に枝わかれする場合がある。ポリープは胃に24%,小腸に96%,結腸に27%,直腸に24%の割合で認められる。特に小腸は内腔が狭く,腹腔内での固定が弱いため,腸重積を生じやすい。

    診断基準1)は,色素斑・特徴的な病理所見を伴う過誤腫性ポリープ・家族歴のうち2つ以上を満たす場合か,色素斑・家族歴がなくても複数のポリープで特徴的な病理所見が確認できた場合,すべてなくてもSTK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントが確認できた場合で,以下の鑑別すべき他疾患を除外できればPJSと診断できる。鑑別すべき疾患は,家族性大腸腺腫症,若年性ポリポーシス症候群,Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群,結節性硬化症,炎症性ポリポーシス,serrated polyposis症候群,Cronkhite-Canada症候群,遺伝性混合性ポリポーシス症候群,Laugier-Hunziker-Baran症候群である。

    残り1,083文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top