腸結核は,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる腸管感染症である。感染経路は主に経口であるが,感染した肺からリンパ行性や血行性に結核菌が腸に達することもある。結核菌が消化管のリンパ濾胞に感染すると結核結節を形成する。結核結節は壊死を起こして小潰瘍をつくり,それらが融合して大きな潰瘍を形成していく。
腸結核は全結核患者の1~2%を占める。肺結核の有無により原発性と続発性に分類される。近年では原発性腸結核が増加し,約半数を占める。消化管の中では,リンパ組織が発達している回盲部や右側結腸が好発部位である。肝硬変,透析,human immunodeficiency virus(HIV)感染,糖尿病,免疫抑制治療,抗TNF-α抗体製剤投与などがリスク因子である。腸結核は進行すると腸管穿孔,腸管狭窄,腸閉塞を合併することもある。
症状は腹痛,下痢,体重減少,発熱など非特異的である。下部消化管内視鏡検査では,回盲部を中心に小潰瘍,不整形潰瘍,地図状潰瘍,輪状潰瘍,帯状潰瘍が認められる。腸のリンパ管は腸管の短軸方向に走行しているため,潰瘍は輪状に配列する。そして,複数の潰瘍が融合して輪状潰瘍や帯状潰瘍になる。介在粘膜には炎症を認めないことが多い。潰瘍が治癒すると瘢痕化し,腸管の短縮,偽憩室形成,炎症性ポリープ,回盲弁の開大などの所見が認められるようになる。また,腸結核は自然治癒傾向があるため,活動性潰瘍と潰瘍瘢痕が混在するのも特徴である1)。
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