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視機能と自動車運転[先生、ご存知ですか(23)]

No.4983 (2019年10月26日発行) P.63

一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

登録日: 2019-10-23

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近年、高齢者に関する事故が増加してきています。高齢になるとさまざまな能力が衰えてきますので、必ずしも認知症に起因した事故ばかりではありません。特に、視機能の低下は加齢による影響が顕著です。自動車を運転する上で、視機能は特に重要なのです。

白内障は目のレンズの役割を担っている水晶体が混濁する病気です。例えば、運転中に標識がぼやけてみえることなどを自覚します。その後に視力検査を受ければ、視力の低下が確認されます。それだけでなく、上下方向の動体視力が低下するのです。

白内障患者の見え方を模擬した特殊なゴーグルを用いた実験では、運転中に道路標識を注視する時間が、正常な人に比べて2倍以上増加したとのことです

緑内障は視神経と視野に特徴的変化を来す病気で、40歳以上の人の5%が罹患していると言われています。緑内障では視野が徐々に狭くなっていきますから、初期には異常が自覚されないことが多いのです。視野障害が悪化するとともに交通事故発生率が増加することが知られています。

運転に必要とされる視機能

現行の道路交通法や道路交通法施行令で定められている、運転に必要な視機能は以下のとおりです。

普通自動車の場合、視力(矯正視力)が両眼で0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上です。そして、一眼の視力が0.3に満たない者または一眼が見えない者については、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であることが条件です。

また、色彩識別能力は赤、青、黄色の識別ができることが求められます。たとえ赤色が褐色に見えても、前記三原色の識別ができればよいことになっています。大型自動車あるいは第二種免許等では視力の条件がやや厳しくなり、さらに深視力の条件が加わります。

したがって、緑内障で視野が狭窄していても、両眼の視力が0.7以上で、片眼で0.3以上であれば、運転に必要とされる視機能検査に合格することになります

また、半側空間無視という症状があります。これは脳の障害(脳卒中や外傷など)によって、障害された脳と反対側の刺激に反応したり、注意を向けることができない状態です。このほか、障害の部位と程度によっては半分ではなく1/4が見えない、1/4盲という症状もあります。

以上のような症状がある人でも視力が良ければ視機能は満たされていると判断されます。もし、左下1/4が見えない人が運転すると、歩行者の飛び出しに気付くのが遅れます。

適切な連携を

法律は必ずしも万能ではありません。先にご紹介した障害がある人で、明らかに自動車を安全に運転する能力に欠けていると考えられる人に対しては、自動車の運転を控えるよう指導することが重要です。

一方で、訓練を行うことで回復する見込みがある場合、あるいは夜間や悪天候での運転を避けるなどの工夫で、安全な運転ができる見込みがあれば、適切な指導の下に運転を続けて頂きたいです

したがって、交通安全に携わる人と医療関係者が良好な連携を保って情報交換を行う必要があると思います。

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