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院長が診療に専念するため“右腕”として実務を担うサポートサービスを活用[クリニックアップグレード計画 〈経営編〉(7)]

No.4974 (2019年08月24日発行) P.14

登録日: 2019-08-28

最終更新日: 2019-08-28

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地域の開業医を取り巻く環境は年々厳しさを増している。診療報酬が長期にわたり抑制されてきた結果、損益率で赤字となるクリニックが約4分の1に上るという調査結果もある。シリーズ第7回は、診療と経営を高いレベルで両立させるために、経営領域をサポートする専門家を活用し、院長が診療に専念できる環境づくりに取り組むクリニックを紹介。これからのクリニック経営のあり方について考える。

開業医が担う業務は、外来や在宅医療の実診療にとどまらず、地域医療活動や医師としての自己研修、診療所管理業務など多岐にわたる。2007年と少し古いデータになるが、日医総研がまとめた調査結果によれば、開業医の1週間の活動時間は合計55.3時間。そのうち診療は42.6時間(77%)で診療以外の活動に12.7時間(23%)を充てていることが分かった(図)。開業医にはクリニックの経営者としての側面もあり、診療報酬の抑制に伴う収入減や競争の激化、人材の確保やマネジメントなどといった、組織としての経営課題に向き合う必要性が年々高まっている状況にある。

人事・総務のマネジメントが課題だった

静岡県富士市にある「するがホームクリニック」では、医師が診療に専念できる環境を整えるため経営面をサポートするサービスを導入している。同院の前身は2012年に開設した在宅専門クリニック。「断らない在宅」をコンセプトに訪問診療を行ってきた結果、看取り件数が同県でトップクラスとなるなど地域医療に貢献してきた。院長の齋藤勝也さんが訪問診療に取り組む中で地域の実情に触れ、「なるべく通院を続けられるような健康管理をしていくことも重要」との思いが強まり、2019年2月に外来機能を持つクリニックとして新たに開院した。

齋藤さんが新クリニックの開業にあたり大きな課題になると感じていたのは、人事・総務領域。齋藤さんは週4日外来診療を行うが、東京・港区でクリニックや住宅型有料老人ホームを運営する医療法人の理事長も務め、法人全体に目を配る必要がある。機能拡張に伴い、医師や看護師、事務職員などのスタッフが増えたことで、組織として機能するためのマネジメントの必要性が高まり、開院を機にIQVIAサービシーズジャパンの「診療所経営アシストサービス」を導入した。

院長のパートナーとなる“伴走型サポート”

IQVIAサービシーズジャパン(www.iqvia.co.jp)の経営アシストサービスは、クリニック運営で重要な①経営戦略、②マーケティング、③地域連携、④人事・総務─の4つのポイントについて、基本スキルとしてMR(医薬情報担当者)の経験を持つ「経営アシスタント」が院長の経営参謀としてクリニックの課題解決に当たる。

従来の経営コンサルタントとの一番の違いは、いわゆる“ハンズオンタイプ”のサービスである点。経営アシスタントが定期的(同院では月5回)にクリニックを訪問し、実務を担当する。「こうあるべき」と誘導するのではなく、院長の診療方針や経営方針といったビジョンを理解し、院長の目指すクリニックの実現に向けたパートナーとなる“伴走型サポート”だ。

「『時代と地域にあった医療を提供する』というクリニックの理念を共有した上で、必要な経営面の業務や課題解決に一緒に取り組んでもらえるサービスを求めていました。経営アシストサービスは戦略の提案だけにとどまらず、クリニックに入り込んで実務をこなしてもらえる、いわば私の右腕となる経営参謀をアウトソーシングできるサービス内容だったので導入を決めました」(齋藤さん)

院内コミュニケーションの潤滑油に

現在、するがホームクリニックの人事・総務領域でアシスタントが具体的に取り組んでいるのは、院長のスケジュール管理や各種事務作業に加え、①ICTを活用した院内のペーパーレス化、②スタッフ間で業務量に偏りが出ないような役割分担やルール設定、③運営会議のサポート、④スタッフとの面談、⑤面接などの採用業務―など。

齋藤さんが最も効果を実感しているのは、院内コミュニケーションの潤滑油のような存在としてアシスタントが機能しているところだ。

「クリニックでは医師と看護師をはじめとするスタッフの円滑なコミュニケーションが重要になります。スタッフが雇用主である院長には言いにくいことでも、アシスタントに相談できる環境があれば不満をため込むことも少なくなり、業務に集中してもらえると思います」

スタッフの満足度向上は医療サービスの質の向上につながり、患者さんの満足度にも影響すると齋藤さんは指摘する。「当院の担当者は話しやすい雰囲気の男性で、医師とスタッフ、またスタッフ間の緩衝材となってくれています。スタッフのケアにはとても神経を使うので、診療に専念できるようになりました」

改定ごとに収益モデルを見直し

齋藤さんが今後期待しているのは、経営戦略領域でのサポートだ。「来年4月には診療報酬改定が控えているので、最新情報をもらいながら戦略を早めに立てていきたいと思います」

経営アシストサービスでは診療報酬の改定内容に合わせ医療収益のシミュレーションを行い、診療科範囲、技術料、予防接種、検査、推定受療率、受診継続率、長期処方率などの項目から方向性を検討、利益を確保する収益モデルを作り上げることを目指す。

「私見ですが、これからの医療機関は集約化、グループ化という流れを無視することはできないと感じています。当院も分院を昨年沼津に開院しました。そこで大切になるのはサービスの質を保つための経営管理です。しかし医療しか学んでこなかった医師が簡単にできることではありません。一般企業でどのような手法が取り入れられているかという事例も参考にしていく必要があります。経営アシストサービスでは、こうした情報や知識を持つアシスタントにいつでも相談できる仕組みが整っているので、とても心強いと感じています」

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