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水痘ワクチン接種は既に発症した帯状疱疹後神経痛(PHN)の疼痛緩和効果を有するか?

No.4971 (2019年08月03日発行) P.56

松尾光馬 (中野皮膚科クリニック院長)

登録日: 2019-08-02

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「帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia:PHN)によるQOLの低下をきたすような痛みも,水痘ワクチンを打つことによって60~70%ぐらい低下する」というご発言のある対談記事を拝読しました(「ドクターサロン」62巻10月号,2018年,p31)。ペインクリニックの専門家に質問しましたが不明で,PubMedや和文論文を検索しても同内容を見出すことはできませんでしたが,多くの患者・医師が対応に苦慮しているPHNに対する画期的な治療と思われます。水痘ワクチンのPHNの疼痛緩和機序について,該当するスタディ,文献なども併せて詳細をご教示下さい。中野皮膚科クリニック・松尾光馬先生にお願いします。

(埼玉県 M)


【回答】

【発症してしまったPHNの疼痛緩和効果に関する検討は現時点では行われていない】

対談の発言記録が意味の取りにくい文章になっていました。私の発言から,「水痘ワクチンをPHNが生じている患者に打つことによってその疼痛が緩和するのか?」という疑問を抱かれたのであれば,その答えは否と言えます。

水痘ワクチンは,わが国においても2016年から50歳以上に対する帯状疱疹予防が効能・効果に追加されました。水痘ワクチンに用いられるワクチン株(Oka株)はわが国で作成され,その株をさらに3代継代培養して作成された生ワクチンが米国で2006年に製造承認されたZOSTAVAXです。

ZOSTAVAXに関しては大規模なプロスペクティブな検討が行われており,その1つがShingles Prevention Study(SPS)1)です。これは水痘罹患歴を持つ60歳以上の3万8546人を無作為に2群にわけ,一方にZOSTAVAX,他方にプラセボを接種し,3.1年(中央値)観察したものです。その結果,帯状疱疹の発症は,ワクチン群で315人(5.4人/1000人・年),プラセボ群では642人(11.1人/1000人・年)にみられ,発症率は51.3%,さらに重症度をスコア化したburden of illnessも61.1%減少しています。

このスタディでは,PHNに関しても検討がなされ,90日以上続くPHNはワクチン群で27人(0.5人/1000人・年),プラセボ群では80人(1.4人/1000人・年)と66.5%も減少することがわかりました。また,SPSに参加し接種後4~7年が経過した1万4270例を追跡した短期継続サブスタディでは帯状疱疹で39.6%,PHNで60.1%減少することが確認されています2)

水痘ワクチンはZOSTAVAXの基になっている株であり,ワクチンのウイルス数は同等以上で細胞性免疫の誘導も同様に行えると考えられるため,同等の効果が期待できます。ただし,現時点では発症してしまったPHNに対する検討は行われておらず,従来から用いられるプレガバリン,三環系抗うつ薬,オピオイドなどを使用していくことになります。

【文献】

1) Oxman MN, et al:N Engl J Med. 2005;352(22): 2271-84.

2) Schmader KE, et al:Clin Infect Dis. 2012;55 (10):1320-8.

【回答者】

松尾光馬 中野皮膚科クリニック院長

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