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コルヒチンはなぜ痛風初期のみに有効なのか?

No.4969 (2019年07月20日発行) P.58

松田正之 (佐久総合病院リウマチ・膠原病内科医長/副院長)

登録日: 2019-07-17

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コルヒチンは痛風発作に著効しますが,発作の初期にのみ有効なのはなぜでしょうか。また,慢性疾患であるベーチェット病や家族性地中海熱にも有効とされますが,なぜ病態生理の違うと思われる疾患に共通する薬理作用があるのでしょうか。

(京都府 K)


【回答】

【発作初期の関節局所への好中球の遊走を強く抑制するため】

コルヒチンは細胞の中に入り込み,チューブリンという蛋白質と結合することで,それにより構成される微小管を安定化します。この微小管は細胞骨格を形成していて細胞分裂で重要な役割を果たしているほか,好中球では遊走能に深く関与していることが知られています1)。コルヒチンは微小管を安定化することで好中球の遊走能を強く抑制します。

一方,痛風は好中球を主体とした急性関節炎です。関節内に沈着した尿酸塩によって刺激されたマクロファージや樹状細胞から炎症性サイトカインが分泌され,その結果として好中球の関節局所への遊走が起こり,活性化します2)

好中球が関節局所へ集まる前,すなわち痛風発作が起こりかけている早期の段階でコルヒチンが投与されれば,理論的には好中球の遊走が抑制されて関節炎が起こりにくくなると期待されます。

また,家族性地中海熱とベーチェット病については,発症機序の根底にいずれも好中球の異常活性化があります。その原因について,前者では発熱などに関係するピリン遺伝子の先天的異常が明らかにされています。両者ともコルヒチンを投与することで好中球の遊走能が抑制され,症状の寛解と再燃の予防に有効であることが明らかにされています。

【文献】

1) 安井耕三:日小児血液会誌. 1995;9(1):1-12.

2) 筒井ひろ子, 他:痛風と核酸代謝. 2009;33(1):1-6.

【回答者】

松田正之 佐久総合病院リウマチ・膠原病内科 医長/副院長

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