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EBMのない治療の選択[プラタナス]

No.4968 (2019年07月13日発行) P.3

田部井 薫 (南魚沼市民病院院長、自治医科大学名誉教授)

登録日: 2019-07-13

最終更新日: 2019-07-10

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  • 私の「写真のある思い出深い症例」は、慢性維持透析患者に前骨髄芽球性白血病(APL)を発症した症例です。61歳女性です。1年前に冠動脈バイパス術を受けました。2カ月前から汎血球減少があり、血液内科に相談したところ、写真のような前骨髄球を認め、APLと診断されました〔前骨髄球82%、染色体異常:t(15;17)(q2;q12)〕。APLの治療は、一般的には、分子標的薬である全トランス型レチノイン酸(ATRA)にアントラサイクリン系薬剤などの化学療法の併用でした。しかし、アントラサイクリン系抗癌剤(IDA)は腎障害患者では禁忌です。さらに、本例では虚血性心疾患があり、心筋障害の副作用のある化学療法の併用は行わないこととしました。

    ATRAの投与量については、薬物動態やいくつかの症例報告を参考にして、常用量を投与し、寛解導入治療を行い、有害事象なく完全寛解を得ました。地固め療法では抗癌剤を使用せず、亜ヒ酸(arsenic trioxide:ATO)単剤で常用量投与としました。透析患者でのATRA、ATO使用例の報告が少なく、日本透析医学会で症例報告をしました。

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