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尿失禁[私の治療]

No.4968 (2019年07月13日発行) P.53

後藤百万 (名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学教室教授)

登録日: 2019-07-11

最終更新日: 2019-07-09

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  • 病態により腹圧性,切迫性,混合性(腹圧性と切迫性の合併),溢流性,機能性尿失禁にわけられる。腹圧性尿失禁は,尿道括約筋機能低下により,咳・くしゃみ・運動など腹圧負荷時,膀胱収縮を伴わずに尿が漏れる。括約筋機能低下には,女性での妊娠・出産・肥満・加齢による骨盤底筋脆弱化や括約筋障害,男性での前立腺手術(前立腺肥大症や前立腺癌)による括約筋損傷などが関与する。切迫性尿失禁では,蓄尿時に膀胱の不随意収縮が起こり,急に強い尿意を感じて(尿意切迫感)我慢できずに尿が漏れる。尿意切迫感,頻尿,あるいは切迫性尿失禁を伴う症状群を過活動膀胱と言う。溢流性尿失禁は,前立腺肥大症などの下部尿路閉塞や膀胱収縮障害による尿排出障害のため,多量の残尿により常に尿が少しずつ溢れて漏れる。膀胱収縮障害は糖尿病,腰部椎間板ヘルニア,二分脊椎症,子宮癌・膀胱癌術後による末梢神経障害型の神経因性膀胱などで起こる。機能性尿失禁は,身体運動障害や認知症のため正常なトイレ移動や動作ができないために,トイレ以外の場所で尿を漏らすことを言う。

    ▶診断のポイント

    詳細な評価項目,診断・治療アルゴリズムについては,「過活動膀胱診療ガイドライン」1),「女性下部尿路症状診療ガイドライン」2)を参照されたい。尿失禁タイプは,既往歴,自覚症状の詳細な問診によりおおよそ診断できるが,治療選択,重症度評価,治療効果判定のためには,尿検査,自覚症状の定量的評価,排尿状態および尿失禁の病態評価が必要である。自覚症状重症度は,尿失禁に関する自己記入式質問票で評価する。排尿状態の評価には,排尿時刻と排尿ごとの排尿量を1日単位で記録する排尿日誌,残尿測定を行う。残尿測定は,経腹的超音波,あるいは残尿測定専用の超音波測定装置により非侵襲的に行う。神経疾患を合併する症例,血尿を伴う症例,残尿を有する症例,初期治療にて改善の得られない症例などについては,泌尿器科専門医による尿流動態検査を含む精査が必要である。

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