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risk-based高血圧治療のススメ [J-CLEAR通信(51)]

No.4745 (2015年04月04日発行) P.45

桑島 巖 (J-CLEAR理事長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-21

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  • 日本高血圧学会による『高血圧治療ガイドライン2009』では,高齢者の診察室血圧における降圧目標値が140/90mmHgであったのに対して,若年・中年者は130/85mmHgと,より厳格に設定されていた。ところが2014年版では,若年・中年者も高齢者と同じく140/90mmHgに緩和されている。その理由として,140/90mmHgより低い降圧目標値を支持する介入試験の成績が乏しいからとされているのみであり,積極的根拠は示されていない。

    最近,このように揺れ動く降圧目標値に一考を促すべく重要な論文が2つ発表されている。1つはBPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration)グループによるランダム化比較試験(RCT)のメタ解析1)であり,もう1つはCALIBER(CArdiovascular disease research using LInked Bespoke studies and Electronic health Records)という英国の登録コホート研究2)である。

    ┃RCT─BPLTTCレポート

    BPLTTCは信頼性の高いメタ解析を発表している研究グループである。メタ解析で採用された臨床試験は,いずれも試験開始前に一次エンドポイント,二次エンドポイント,試験方法,症例数,解析方法など,事前に登録を行ったもののみを対象としており,そのエビデンスレベルは非常に高い。

    ◉BPLTTCレポートの概要

    目的:血圧下降による絶対リスクの低下は,ベースラインの心血管リスクが高いサブグループのほうが大きいとの仮説を検証する。
    方法:降圧薬に関するRCTに参加した約5万人の患者データを用いてメタ解析を行った。主要評価項目は主要心血管イベント。ベースラインの心血管リスクにより4群にわけた(11%未満,11~15%,15~21%,21%以上)。
    結果:5年間の降圧薬治療による1000例当たりの各群の心血管イベント予防数は,14件,20件,24件,38件であり,絶対リスクはベースラインのリスクが高い群ほど大きく低下した(傾向性検定:P=0.04)。
    結論:5年間の心血管合併症発症予防は,絶対リスク減少でみると,高リスク群で最も降圧薬による効果が大きく,ついで中等度,軽度,低リスク,の順であった。ベースラインの心血管リスクが高い群ほど降圧薬による絶対リスク低下度が大きいことを証明した。
    治療による有用性は相対リスク減少で表されると効果を誇大に表現する場合がある。患者100例を対象とした場合,たとえば治療群の発症は1例,プラセボ群では2例とすると相対リスク減少は50%になり効果がかなり大きいようにみえる。しかし実は絶対リスク減少は100例中1例にすぎない。つまり100例治療してやっと1例(1%)の発症を予防できることになる。治療効果は絶対リスク減少で表すのが望ましい。

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