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医師法21条医事課長通知の撤回を求める[長尾和宏の町医者で行こう!!(95)]

No.4951 (2019年03月16日発行) P.24

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2019-03-13

最終更新日: 2019-03-13

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晴天の霹靂

厚生労働省は突然、2月8日付で都道府県部局長宛ての医政局医事課長通知を発出した。医師法21条の「異状」に関する解釈通知である。本通知の内容を吟味し、今後、予想される混乱について述べたい。

医師による異状死体の届出の徹底について(通知)
近年、「死体外表面に異常所見を認めない場合は、所轄警察署への届出が不要である」との解釈により、薬物中毒や熱中症による死亡等、外表面に異常所見を認めない死体について、所轄警察署への届出が適切になされないおそれがあるとの懸念が指摘されています。医師が死体を検案するに当たっては、死体外表面に異常所見を認めない場合であっても、死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況等諸般の事情を考慮し、異状を認める場合には、医師法第21条に基づき、所轄警察署に届け出ること。

ここで医師法21条(昭和23年法律第201号)について復習しておきたい。

第21条
医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

医師法21条は、医師が死体を「検案」して「異状」を認めた場合に警察への届出義務を罰則付きで規定している。この「検案」の定義については、2004年4月13日の最高裁判決で「医師法21条にいう死体の『検案』とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること」とされた。都立広尾病院で起きた消毒薬を誤注射して、予期せぬ急変・死亡した事案の最高裁判決である。東京地裁(2001年8月30日判決)は医師が「検案して異状」を認識していたと判断したのに対し、東京高裁(2003年5月19日判決)は、消毒薬の誤注射という医療過誤で死亡したのではないかとの認識があっても、死亡診断した医師は外表面の異状をはっきりと認識していたわけではないから死亡診断の時点では異状性の認識がないと判断し、東京地裁判決を誤りだとして破棄した。最高裁は「検案」とは外表面を見る行為である、と明確化した。つまり、外表の異状の認識がない場合、たとえ医療過誤の認識があっても異状性の認識はないとするのが最高裁の解釈である。

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