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当院におけるABC検診─胃X線検査,胃内視鏡検査所見との比較検討例も含めて

No.4950 (2019年03月09日発行) P.48

新木正剛 (新木医院院長)

登録日: 2019-03-08

最終更新日: 2019-03-05

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  • わが国では毎年13万人が胃癌に罹患し,5万人が亡くなっている

    胃癌発生の最大の危険因子はヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)である

    ピロリ菌感染により胃粘膜は慢性炎症に陥り萎縮・老化するが,この様相は血中のペプシノーゲンを測定することのみでも推測できる

    ABC検診とは胃癌のリスクを評価する検査であり,ピロリ菌とペプシノーゲンを同時に測定することでより効果的に判定ができる

    当院で2016年までにまとめたABC検診91例について考察するとともに,胃X線検査,ABC検診,胃内視鏡検査の各所見を比較検討する

    1. ABC検診とは

    ABC検診は,胃癌を見つける検査ではなく,なりやすさがわかる検査である。胃癌は1999年までは,わが国のがん死亡の最大の原因であった。現在でも最も頻度の高いがんであることに変わりなく,毎年13万人が罹患し5万人が亡くなっている1)。胃癌発生の危険因子はヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori,ピロリ菌),塩分,たばこ,ストレス,遺伝的因子などあるが,最大の危険因子はピロリ菌である2)3)。ピロリ菌感染により胃粘膜は慢性炎症に陥り,萎縮・老化の一途をたどる。この程度は血中のペプシノーゲン(pepsinogen:PG)を測定することで推測できる2)4)5)(ちなみに感染のない胃は年をとっても若いままで,胃癌発生はほとんどない1))。ABC検診とは胃癌になりやすい人を見つける検査であり,ピロリ菌抗体価検査とPG測定を併用することで威力を発揮する2)4)5)。採血量がほんのわずかで時間もかからず,食事に関係なくいつでも検査できる4),誰が判定しても同じ結果が得られる,という客観性を持つ2)。当院では2012年よりABC検診を導入し希望者に実施しており,2018年2月現在110例に達した。このうちLATEX凝集法にて測定した91例を報告する(92例目以降はEプレート採用のため後日報告予定)6)。最後の項では胃X線検査(X-ray photograph:XP)・ABC検診・胃内視鏡検査(gastro- intestinal fiber:GF)所見を比較検討する機会を得たので併せて考察した。

    2. 当院でのABC検診結果

    (1)A群─健康な胃

    A群は健康な胃であり,当院では35/91人であった。井上和彦氏はA群患者2802人を14年間追跡した結果,胃癌発生はゼロであったと報告している5)。A群がいかに健康な胃であるかを物語る証拠と言える。しかし,安全のため5年に一度は内視鏡検査を受けるべきである。

    (2)B群─少し弱った胃

    B群は少し弱った胃でピロリ菌のみが陽性である。胃粘膜の萎縮は,なしかまたは軽微である(当院26人)。少数だが胃癌発生もあるため(1/1000人),GFとピロリ除菌が勧められる5)。除菌専用ヨーグルト単独での除菌は無効である2)。一方,B群だがGFではC群特有の所見が観察され,実質C群と診断された人が12人もいたことには驚く(後述)。

    (3)C群─ピロリ菌,ペプシノーゲン(PG)陽性の胃

    当院のC群は23人であった。ピロリ菌,PGともに陽性。胃粘膜の萎縮・老化が進行し,腸上皮化生,粘膜ヒダの著しい肥大発赤等,胃の荒廃が進行(C群のがん化リスクは1/500人)している。ピロリ除菌はもちろん必須である。当院では4人に胃癌が発見され,全員手術を受けた。3人は経過良好で,1人は3年9カ月後に亡くなったが,ABC検診を勧めたことが早期治療につながったと確信している。

    そのほか生検で悪性が強く疑われた人が3人おり,定期フォロー中である。せっかくC群と判定されながらGFを拒否した人もおり,がん化リスクの高さを考えると複雑な気持ちである5)

    (4)D群─ペプシノーゲン(PG)陽性の胃

    D群はPGのみが陽性の群である。胃粘膜は荒れ放題で,もはやピロリ菌も棲めなくなった胃である(当院5人)。がん化リスクがきわめて高く(1/80人),半年,1年ごとのGFは必須である5)

    1例目は胃粘膜の荒廃が著しく,粘膜下腫瘍も存在,悪性が強く疑われ大学病院に紹介した。2例目は胃粘膜の荒廃,発赤腫大はあるが,精密検査でピロリ菌陽性と判明した。すなわち実質C群に降格した幸運例で,さっそく除菌した。しかし毎年のフォローは必要である。D群の中には稀ながらピロリ菌陽性者もいることを忘れるべきでない1)。3,4例目は,D群特有の胃粘膜所見に加え多発性胃腺腫があり,がん化の危険が高く,毎年のフォローを指示した。5例目はGFの結果実質B群であったが,他医で制酸薬投与中であることを聞き漏らしていたため,その後2段階上のD群判定となった。ABC検診の際は服用中の薬,特に抗潰瘍薬などは必ず確認すべきである1)4)

    当院でのD群4人は2018年2月現在全員健在であり,胃癌が発見されたのはすべてC群であった。これはC群のほうが危険ということではなく,D群まで進行する人が少ないからであり,D群のリスクが最大であることに変わりない(D群のハザード比:121倍)2)

    (5)E群―除菌群

    2/91人はE群(除菌群)であった。E群ではピロリ菌再感染,がん化も稀に起こるため定期フォローは必須である1)7)

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