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上部消化管疾患診療の最近の話題―胃食道逆流症,ヘリコバクター・ピロリを中心に[内科懇話会]

No.4948 (2019年02月23日発行) P.44

司会: 寺野 彰 (獨協学園理事長・獨協医科大学名誉学長)

演者: 鈴木秀和 (慶應義塾大学医学教育統轄センター教授)

登録日: 2019-02-22

最終更新日: 2019-02-20

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  • 【司会】寺野 彰(獨協学園理事長・獨協医科大学名誉学長)
    【演者】鈴木秀和(慶應義塾大学医学教育統轄センター教授)

    好酸球性食道炎が最近多く見られる。胃食道逆流症(GERD)症状と似ているので,見落としのないよう注意が必要である

     ボノプラザンが登場し,GERD治療薬は新たなフェーズに入った

     がん幹細胞マーカーCD44v9の発現状態の観察は,ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染などによる胃癌の発症・再発リスクあるいは治療抵抗性の評価に有用である

    シタフロキサシンは,gyrA遺伝子の変異の有無にかかわらず高い除菌効果が期待できるが,double-mutationがある場合は耐性となりやすい

    ◉ 胃食道逆流症(GERD)

    昭和の終わりから急速に欧米化が進むとともに平均寿命も延び,現在は超高齢社会になっています。食生活の変化や高齢化に伴い,肥満者や姿勢の悪い方が増えました。その結果,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)患者が現在,急速な勢いで増加しています。

    GERDが増加している一因として,薬剤の服用が挙げられます。高齢者を中心に循環器疾患や脳血管疾患の予防のために低用量アスピリンが処方されたり,整形外科疾患に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)が使用されたりすることで,胃酸が増強されて逆流症を発症する方が増えています。

    外来診療で内視鏡検査を行うと,昔は胃潰瘍や十二指腸潰瘍を見つけることが多くありましたが,最近では逆流性食道炎がよくみつかるようになりました。私共の予防医療センターの人間ドックでも,症状が何もない男性であっても,その約1割に逆流性食道炎が見つかります。女性ではその1/3程度に発見されます1)

    逆流性食道炎は,食道が扁平上皮できれいに治ってくれるとよいのですが,きれいに治らないことが多いのです。円柱上皮という胃上皮あるいは腸上皮のような細胞に置き換わっていき,長い間逆流が繰り返されると,腸上皮化生(intestinal metaplasia)が起こってバレット食道になります。わが国でも最近になり,下部食道腺癌が散見されるようになってきました。発見される年齢は80歳代に差しかかっていたり,80歳代半ばぐらいだったりもします。つまり,定期健診などで内視鏡検査を行わなくなった年代に見つかるわけです。そのため,下部食道腺癌は胃癌や食道扁平上皮癌に比べると,見つかりにくいと言えます。

    バレット上皮は腸上皮化生を中心とした円柱状の変化ですが,これがみられるときには転写因子CDX2が陽性になっていきます。そのとき,チェックポイント遺伝子のp27も陽性になっており,徐々にdysplasia(異型性)となり,がん化が進むと,Ki-67という増殖細胞マーカー蛋白質やmiR221とmiR222というマイクロRNAの発現が上がることがわかりました2)。何が引き金になって,この変化が起きているのかを理解することが,予防的にも病態的にも非常に重要です。

    しかし,内視鏡検査自体,侵襲がありますので,今後は,内視鏡をしないでも血液検査などで診断できる,新しい簡便なマーカーを開発していかなければ,70歳代以上の高齢者における早期病変の検出は難しいと思います。

    (1)GERDの治療

    GERD治療の一次的な目標は,症状をコントロールすることです。症状をコントロールするためには症状を評価しなければなりません。内科医は問診の中で症状を聞いていきますが,ある程度効率的に,またはリサーチとして行う場合は,問診票を使うこともあります。問診票は質問項目が少なければ少ないほど実用的だと思います。GERDの問診票「GerdQ」を使うと5分ほどで行うことができ,大変便利です。

    プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)は酸分泌をしっかりと抑える薬ですが,PPIを服用しているにもかかわらず完治に至らず,週1回程度の頻度で症状が出現してしまう人が約7割もいます。処方通りに服薬するか否かは患者さん次第でもあります。実際,PPI服用中にもかかわらず,市販(over the counter:OTC)薬も服用している人が45%もいるという結果を得ました。PPIには十分な酸分泌抑制効果があるにもかかわらず,中和作用を持つ制酸薬をさらに加えて服用している,OTC薬も使っているという人がこれだけいるわけです。また,実際には逆流症でない方にもPPIを処方してしまっているということもあると思います。

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