糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)のうち,糖尿病による腎障害が存在すると考えられる場合に糖尿病性腎臓病(DKD)と臨床診断する
DKDという臨床診断名は,必ずしも糖尿病による腎障害のみの存在を意味するものではなく,動脈硬化性病変や他疾患の合併など多様性を包括した概念である
DKDの診断には必ずしも腎生検は必要ではないが,他疾患の合併が疑われる場合やDKD以外の病態の関与が疑われる場合は腎生検を考慮すべきであり,腎臓専門医への紹介が必要である
糖尿病性腎症(diabetic nephropathy:DN)は,2016年のわが国における新規透析導入患者の44%を占め,1998年以降透析導入原疾患の第一位となっている1)。従来,DNの臨床経過は糸球体過剰濾過の状態から,微量アルブミン尿,顕性蛋白尿を経て,ネフローゼ症候群から腎機能低下へと進行し末期腎不全に至ると考えられてきた2)。しかし,近年,アルブミン尿を呈さずに腎機能が低下する症例3)~5)やアルブミン尿が改善・消失する症例が報告され6),アルブミン尿が必ずしもDNの初期病態とその後の進展を予測しないことが明らかとなった。さらにアルブミン尿の有無にかかわらず“progressive renal declineあるいはfast renal decline”と呼ばれる比較的急速に進行する症例も報告されており7),DNの多様性が注目されるようになった。