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急増する梅毒

No.4939 (2018年12月22日発行) P.57

樽本憲人 (埼玉医科大学感染症科・感染制御科講師)

前﨑繁文 (埼玉医科大学感染症科・感染制御科教授)

登録日: 2018-12-20

最終更新日: 2018-12-17

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【パートナーにも検査を受けることを勧めるように指導することが必要】

梅毒の歴史は,古くは15世紀末にさかのぼる。当時,梅毒は西インド諸島の風土病だったが,コロンブスが新大陸発見の帰りに欧州に持ち帰って以降,世界的な広がりを見せ,現代に続いている。ここ数年に至っては急激な増加を示し,国立感染症研究所感染症情報センターの統計では,わが国における2017年の感染者は5700人を超え,先天梅毒も増加傾向にあり,関連学会より警鐘が鳴らされている。

特に異性間で感染が広がっており,男性は中年層まで,女性は若年層が中心である。マクロライド系薬の多汎用により,現在の流行株のSS14系統はマクロライド系薬に耐性を示している。

梅毒を症状から疑うのは困難なこともある。たとえば,第1期と第2期の症状が混在したり,飛蚊症,扁桃炎,急性肝炎,子宮頸癌などと類似する症状も多い。梅毒が疑われた場合には血清学的検査が有用であるが,RPRは必ずしも16倍を満たさない場合があることに注意が必要である。

また,近年普及してきたラテックス法は,急性期にはTP抗体がRPRより先に陽性になることにも留意する必要がある。血清学的検査を積極的に行い,梅毒の早期診断および治療のみならず,パートナーにも検査を受けることを勧めるように指導することが重要である。

特に,再発を診断する際には,イムノクロマト法によるキットにおいて「トキシン陽性」となりやすいため,診断の根拠としないよう注意する。

【参考】

▶ Stamm LV:Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(2):583-9.

【解説】

樽本憲人*1,前﨑繁文*2  埼玉医科大学感染症科・感染制御科 *1講師 *2教授

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