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(3)A群溶連菌の反復感染とは本当にあるのか?[特集:文献を紐解く 溶連菌のこんな話題]

No.4937 (2018年12月08日発行) P.37

小杉俊介 (飯塚病院総合診療科)

登録日: 2018-12-10

最終更新日: 2018-12-05

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咽頭へのA群溶血性連鎖球菌(GAS)の反復感染は起きうるが,頻度としては少ない

そもそも小児に比べ,成人の咽頭炎はウイルス感染症を積極的に疑うべき

成人でのGAS咽頭炎の再発の診断は判断が難しく,ウイルスに準じた慎重な経過観察でよい場合が多い

1. 症例─咽頭炎の再燃?

50歳,男性。生来健康。

4週間ほど前に,咽頭痛と38℃後半の発熱が出現し,総合診療外来を受診した。溶連菌迅速キット検査も施行され陽性であったため,抗菌薬(ペニシリン系)による治療が行われた。治療開始後は改善が得られたため,合計10日間の内服治療が行われた。

2日前から再度咽頭痛が出現し,その後咳嗽が出現したため再受診した。身体所見では,両側の扁桃腫大および白苔付着があり,前頸部のリンパ節の腫脹がみられる。Centor scoreの4項目中3項目を満たし,迅速キットによる検査を行ったところ陽性であったため,A群溶血性連鎖球菌(group A Streptococcus:GAS)による咽頭炎再燃と判断し,抗菌薬の内服にて治療を行うこととした。

上記のような症例を経験したことはないだろうか。本当に上記は咽頭炎再燃なのであろうか。本特集では,成人のGAS咽頭炎について検討し,反復感染に関して知識を共有できればと思う。

2. 成人におけるA群溶血性連鎖球菌(GAS)咽頭炎の有病率とは

そもそも,咽頭炎のうちGASが原因となるものはどの程度あるのであろうか。米国では全外来受診のうち,2.2%が咽頭痛のため受診すると言われているが1),そのうちGASが原因となるものは5~36%前後であり(表1)2),成人に限ると5~15%程度であると報告されている3)。つまり,成人では咽頭炎のうちGAS以外の原因が90%前後を占めているということになり,その中では,そもそも抗菌薬を必要とせず自然治癒が期待できるウイルス性咽頭炎が最も一般的な原因である。つまり,有病率の観点からは,そもそも成人でGAS咽頭炎を発症する可能性は低いと考えられる。しかし,実際診療をしている中では,もっと多いように感じられるのではなかろうか。そしてそれは,上記のように以前にもGAS咽頭炎に対して抗菌薬での加療歴のあるケースが多いのではなかろうかと推察する。どうしてそのように感じるのであろうか。

 

米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)のガイドライン4)では,明確にウイルス性咽頭炎の特徴と考えられる症状(鼻漏,咳嗽,口腔内潰瘍,嗄声など)がある場合を除いては,GAS咽頭炎とウイルス性咽頭炎を区別することは困難であると記載されている。つまり,臨床症状から両者を区別することは困難であり,抗菌薬が必要かどうかの判断はその他の観点,つまり検査結果などを総合して検討する必要がある。

では,区別が困難な際に提出すべき検査とは何があるのであろうか。

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