株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

COPDと栄養療法 [今日から使える栄養療法の質を上げるケーススタディ(2)]

No.4788 (2016年01月30日発行) P.39

監修: 若林秀隆 (横浜市立大学附属 市民総合医療センター リハビリテーション科 診療講師)

小坂鎮太郎 (練馬光が丘病院総合診療科NST QIT(Quality Improvement Team))

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 【症例】 ‌COPD,高血圧の既往があるADLの自立した78歳の独居男性,元運転手
    【現病歴】 ‌62歳のときに労作時の呼吸苦を自覚して近所の内科にてCOPDの診断を受けた。以後,薬物療法を受けるが呼吸器リハビリテーションや栄養指導などは受けていなかった。ここ1年間で食欲が低下して44kgから38kgと体重減少を認める。食事はコンビニエンスストアで購入。かかりつけ医までの歩行時間が2年前の倍かかるようになり,倦怠感が続いていた。喀痰量は変わらず,膿性喀痰は認めないが,階段を昇ると呼吸苦が悪化するため外来を受診した。転倒歴はなく,肺炎球菌ワクチンは未接種。
    【既往歴】 54歳時に高血圧,62歳時にCOPD
    【内服薬】 ‌エナラプリル5mg,チオトロピウム1日1回1吸入,ホルモテロール1日2回1吸入
    【アレルギー】 なし
    【社会歴】 ‌65歳まで建築業,60歳時に離婚して独居,息子と娘が1人ずついるが連絡はとっていない,両親兄弟ともにいない,16歳より現在まで1日20本程度の喫煙,飲酒は機会飲酒,ADL/IADLは自立,居住環境:5階建てマンション,介護保険申請なし
    【身体所見】 ‌身長165cm,体重38kg,BMI 14,血圧128/76mmHg,脈拍98bpm・整,呼吸回数16回/分,SpO2 92%(室内気),体温36.2℃
    ‌頭頸部:眼瞼結膜は桃白色,眼球結膜は黄染なし,頸静脈怒張なし,頸部リンパ節腫脹なし,胸鎖乳突筋の発達が著明,気管短縮を認める 胸部:呼吸音に左右差なし,両側下肺にfine cracklesを聴取する 心血管:心音は整,S1・2亢進なし,S3(−)・S4(−),第4肋間胸骨左縁にLevine Ⅱ度の全収縮期雑音を聴取する 四肢:浮腫なし,ばち指を認め,末梢は温かい 握力:右25kg,左22kg 認知機能:長谷川式認知症スケールで26/30点,老年期うつ病評価尺度(GDS15)にて0/15点,興味の減退や希死念慮は認めなかった
    【検査所見】 ‌白血球7820/μL,リンパ球840/μL,Hb 10.5g/dL,Plt 24×104/μL,TP 7.6g/dL,Alb 3.6g/dL,AST 38IU/L,ALT 35IU/L,Na 134mEq/L,K 4.1mEq/L,Cl 103mEq/L,Mg 2.5mEq/L,P 4.7mg/dL,BUN 16mg/dL,Cr 1.24mg/dL(eGFR 46mL/分/1.73m2),CRP 0.6mg/dL,PaCO2 58mmHg,尿蛋白(−)

    今回のポイントは以下の3点である
    ・慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の健康寿命を上げるための診療の質を理解する。
    ・悪液質/カヘキシア(cachexia)の診断ができる。
    ・栄養療法の原則に基づいてCOPD患者の低栄養を早期発見してアプローチする。
    それでは前掲の症例について①栄養療法の必要性のスクリーニングと5つの原則に則った初期評価,②治療方針とその内容,③必要栄養量・内容とその投与方法,④今後の栄養投与とリハビリテーション計画,そのほか必要なことを,多職種の目線で考えてみたい。

    残り4,694文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top