株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

わが国の学会の在り方─現状と将来展望[エッセイ]

No.4931 (2018年10月27日発行) P.67

岡田昌義 (日本血管内治療学会理事長)

登録日: 2018-10-28

最終更新日: 2018-10-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

近年、学術集会はわが国において毎年定期的に開催されているのが現状である。

毎年、会長が変わり、開催地も変化するので、新しい学会のテーマやトピックスが発表されている。学会には、基礎系として日本解剖学会、日本生理学会、日本薬理学会、日本病理学会、日本生化学会などを含む50の学会が、また臨床系としては、日本外科学会、日本胸部外科学会、日本消化器外科学会、日本内科学会、日本循環器学会、日本整形外科学会、日本透析医学会、日本乳癌学会、日本泌尿器科学会、日本糖尿病学会、日本癌学会などを含む177の学会が存在している。この両者を含めて227学会(2014年11月現在)という多数の学会が存在していることになる。

これは1人ではとても補えるものではなく、1人で5~6個の学会に属する場合が多い。大きな学会では、年会費を収め、また集会の際には参加費を収めることになる。そしてネームタグを受け取り、各会場に出入りできるようになる。これは一般的な方法である。このような学会ではある程度の集金力(薬業協会、医療メーカー、同門会などのバックアップ)がなければ、とても開催することができない。大学の教授であっても、集金力がなければとてもできないことである。

また、学会には専門医制度があり、何回以上出席しなければ点数が取れない、という規則もあり、そのためにも出席せざるをえない、ということにもなる。

この他にも医療メーカーが主催する「地方会」「研究会」「懇談会」などが数多く存在する。これらも年に数回開催される。これは医療メーカーの人たちが、このような研究会でしか医師と接触できないようになっており、開催時にわずかの会費を集めて、研究会終了後に必ず情報交換会を行い、ここで製品の情報を提供する。各都道府県には、多少の数の違いはあっても、30~40病院はあると思われる。本来、このような研究会は、それらの病院から代表世話人として、大学教授、病院長、病院の部長あたりが運営にあたることになる。

実際面としては、大学であれば臨床講堂、病院であればカンファレンスホールなどを使用して開催される。また、メールで演題を集め、それらをアレンジしてプログラムを作成すれば、金銭的にも特に問題はない。ところが、このようなことで開催する研究会でも、多少とも費用が掛かるので、年間1施設1万円、あるいは開催時に参加費を徴収することで解決できるものと思う。

というのも、37年間にわたって継続していたある研究会が2017年7月10日にその幕を閉じた。これは某医療メーカーの援助が、最近の不況が原因で中止せざるをえなくなった。この37年間には時代とともに「テーマ」を順次変化させて今様なふうに変貌していたのだが、その流れは残念ながら中断せざるをえなかった。これはやはり医療メーカーへの依存が強く、自分たちでやっている、という意気込みに欠けていたからであろうと推察する。したがって、現在年に数回行われている「研究会」「談話会」などは一度整理して、自分たちで運営しているのだ、という意気込みをもって運営にあたるべきであると思う。

大きな学会では、年会費を払っており、また学会の折には参加費を払っているので良い。抄録集には広告なども掲載されており、特に問題はないと思われる。現在、学会への支援だけでは金銭は出ないが、広告が出ればこれで良し、という時代になってきている。これほど全国では多数の学会があり、それぞれの部門で苦戦しているのは事実であるが、何らかの形で運営されている。とにかく、今後増加するかもしれない学会を自分たちが責任をもって運営している、という意気込みの上でやり遂げたいと思う。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top