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緑内障を合併したアレルギー症例へのステロイド筋注療法は可能か?

No.4928 (2018年10月06日発行) P.60

橋口一弘 (ふたばクリニック院長)

登録日: 2018-10-07

最終更新日: 2018-10-02

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花粉症に対してどうしてもステロイド〔トリアムシノロンアセトニド(TCA)(ケナコルト-A®)40mg〕の筋注が必要ではないかと思われる臨床症例をみることがあります。ケナコルト-A®の添付文書をみると,緑内障の既往または治療中であった場合,「原則禁忌」となっていますが,原則禁忌とはたとえ1回の注射でも避けるべきということでしょうか。また,代替となる治療法があればご教示下さい。

(大阪府 C)


【回答】

【薬物動態からみて,1回であってもステロイド筋注療法は避ける】

(1)緑内障を合併する症例に対する全身ステロイド治療

ステロイドの副作用には,眼圧上昇によるステロイド緑内障があります。全身投与(経口投与など)よりは局所投与(点眼薬)により発症する比率が高いことが知られています。長期にわたる使用で発症しやすいとされますが,個人差があり反応性が高い人では短期間の使用でも発症します。

ステロイド治療中に発症したときはすぐに薬物を中止することが大事です。どうしても必要があり,ステロイドを使用しなければならない症例では,定期的に眼科的副作用(眼圧測定,眼底検査,白内障の有無など)のチェックが必要です。

(2)重症例に対するステロイドデポ製剤筋注

Ⅰ型アレルギーである花粉症に対するステロイドは十分効果があることが期待されます。残念ながらこれまでにわが国では,花粉症に対するステロイド(ケナコルト-A:TCA)の筋注療法の臨床試験は行われていません。

海外においては,1988年までに16件の季節性アレルギー性鼻炎に対するステロイドデポ製剤の筋注療法の有効性・安全性についての臨床試験の報告があります。TCAについては,二重盲検・プラセボ対照とした試験が1件,オープン試験が1件のみです。いずれも花粉症症状に対する効果は良好であることが示されています。

しかし,至適用量の検討がなく,被験者選択,使用開始時期や使用期間など一定の基準での施行ではないこと,抗ヒスタミン薬との比較がないこと,など様々な問題点があります1)

(3)TCAの薬物動態

TCA 40mgの筋注後,3時間で最高血中濃度に達し,有効血中濃度は2~3週間持続することが知られています。そのため血中コルチゾール値,尿中17-ヒドロキシコルチコステロイド(17-hydroxycorticosteroid:17-OHCS)も長期間抑制され,正常値に回復するまでに5週間要するとされます。

ご質問の緑内障患者へのTCAの筋注療法の可否については,以上のTCAの薬物動態からみて緑内障が発症または増悪(ステロイドによる眼圧上昇)したときに血中から消失させることは不可能なので,TCA筋注は避けるべきと判断します。

(4)代替となる治療

根本治療として,2017年で3年を迎えるスギ花粉舌下免疫療法があります。効果発現までに長期を要しますが,副作用も少なく有効な治療法であると思います。最近の報告でも重症例に対する有効性が報告され,期待できる治療法であると思います。また「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)」2)には,花粉予防対策,初期治療の施行など緑内障合併例にも使用できる薬剤の記載があるので,花粉飛散初期からきっちり施行してみることが大事です。

【文献】

1) 池田勝久, 他, 編:EBM耳鼻咽喉科・頭頸部外科の治療 2015-2016. 中外医学社, 2015, p182-7.

2) 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会, 編:鼻アレルギー診療ガイドライン─通年性鼻炎と花粉症─2016年版. 改訂第8版. ライフ・サイエンス.

【回答者】

橋口一弘 ふたばクリニック院長

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