深頸部膿瘍は,主に口腔や咽頭からの感染を契機として頸部の組織間隙に膿が貯留する疾患である。上気道の浮腫による呼吸困難,降下性壊死性縦隔炎,敗血症,播種性血管内凝固症候群,内頸静脈内血栓形成などの合併症が発生することがあり,重篤な転帰をとる可能性がある。
頸部局所の発赤,腫脹,疼痛,嚥下困難,発熱などの症状から本疾患を疑う。起因となった感染契機や経路については判然としないこともある。糖尿病の既往,副腎皮質ステロイドホルモンや免疫抑制薬の使用歴についての問診も重要である。頸胸部造影CT検査による膿瘍腔形成や時に伴うガス産生により診断するが,同時に口腔・咽喉頭の観察と採血を行い,早急に治療方針を決定する。
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