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中国メディアから収集した鳥インフルエンザA（H7N9）に関する疫学情報解析 ［学術論文］
2013年2月に中国で鳥インフルエンザA（H7N9）〔以下，A（H7N9）〕のヒトへの感染が確認された。A（H7N9）は重症化しやすく，既に報告された140例の感染例のうち約3割が死亡した。我々は，4月1日の発生報道以降，中国メディアが報道した中国語の情報から独自に疫学情報を収集するRumor Surveillanceを開始した。2月以降に確認された患者127例（うち死亡例は32例）について性別，年齢，発症日，転帰，職業などの情報をもとに解析した結果，①4月の生鳥市場閉鎖後に患者発生が激減したこと，②60歳以上に感染例や死亡例が多いこと，③感染例の職業に退職者や農業関係者が多いこと，が判明した。我々のRumor Surveillanceの結果は，A（H7N9）に関する最近の中国の研究者の報告と一致した。未知の感染症の場合，情報公開が遅れることがあり，疫学的特徴を把握するのに時間を要する。このため，メディアニュースを用いたRumor Surveillanceが迅速な情報収集に有用であり，近年のインターネットの普及によりどこででも実施可能であることから，今後も積極的に活用すべきと考えられる。
1. 疫学情報を迅速に入手する試み
鳥インフルエンザA（H7N9）〔以下，A（H7N9）〕の最初のヒト感染例は2013年2月19日に確認され，4月1日に世界保健機関（WHO）から世界警戒対応（Global Alert and Response：GAR）が発令された。A（H7N9）は重症化しやすく1），同年11月30日までに確認された140例の感染例のうち，45名が死亡した（致命率32.1％）。それに加え，限定的ながらも家族内感染が確認されているため2），中国近隣諸国も警戒を強め注目している。最近，中国からの報告が相次ぎ，A（H7N9）の様々な特徴が明らかになってきている。しかし，これらの情報が公開されるまでに時間を要することと，内容が詳細でないという問題がある。
我々は，インターネットを通じて中国のメディアが報道したA（H7N9）のヒト感染例に関する情報を，中国語の記事から毎日独自に収集するRumor Surveillanceを行い，A（H7N9）の疫学情報を迅速に入手することを試みた（http://h7n9flu-information.hatena blog.com/）。
2. インターネット上のメディアニュースから情報を得るRumor Surveillance
我々は，2013年4月1日から11月30日まで，インターネットを用いて，中国の新華社，中国疾病予防管理センター（China CDC），およびA（H7N9）発生地域を中心とした地元メディア（新聞，テレビニュースなど）が報道したヒト感染例の情報を中国語で収集した。さらに，中国メディアが診断確定と報道した症例について，年齢，性別，職業，家禽類との接触歴，発症日，抗ウイルス治療開始日，回復および転帰と死亡日，発生地域についての情報を収集した。
続いて，感染例と死亡例の合計を全体と男女別で集計し，年齢の中央値を算出した。 A（H7N9）の流行状況を明らかにするため，患者の発症日をもとにグラフを作成した。また発生地域を特定するため，各省市ごとに感染例数を集計した。各地域の生鳥市場の閉鎖と再開の日時についての情報も中国メディアから得た。
感染例の致命率（死亡例数／感染例数）を算出し，さらに10歳ごとの年齢層に区切り，χ2検定を用いて比較検討した。P値0.05未満を有意差ありと判定した。
感染例の職業を退職者，農業関係者，畜産業者，その他，不明の5つに分類し，それぞれの職業について感染例数と死亡例数を集計し，10歳ごとの年齢層にわけて比較した。また，死亡例においても同様に職業について検討した。
なお，患者の家禽接触歴については，情報が不足しており解析を行わなかった。
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