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自閉症スペクトラム

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-04-18
小枝達也 (国立成育医療研究センターこころの診療部部長)
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  • ■疾患メモ

    自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder)は,物や人への興味関心の持ち方が独特で,物や手順などにこだわりを持ちやすく,社会的なコミュニケーションや対人関係の形成に困難を呈する発達障害である。

    発生率は1%前後と考えられている。相手の気持ちを忖度する脳機能,感情をコントロールしたり共有したりする脳機能,言語に関する脳機能,顔や表情を認知する脳機能などの発達に異常があるとされる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    視線の合いにくさ,こだわり,パニック,感覚過敏・鈍麻,共感の乏しさ,常同行動,コミュニケーションの障害などが主な症状である。

    視線の合いにくさ:文字通り視線が合いにくいということである。合わないというだけでなく,一瞬チラッと見てすぐに視線をはずすというパターンもよくみられる。

    こだわり:物や手順への執着をさす。物品への固執だけでなく,手順やパターンなどへのこだわり,勝つことへのこだわりなど様々なものがある。特定の人に対してこだわることもある。

    パニック:不安が高じたり,こだわりのパターンが乱されたりしたときなどに見せる感情の興奮,泣き,奇声,自傷などを伴うものを言う。パニックを起こしている最中は自制がきかず,指示も聞けないために,危険回避が不十分になる。

    感覚の過敏:音や触覚などに過敏で,その感覚の曝露を極端に嫌がることを言う。たとえば,太鼓や打ち上げ花火の音を怖がって耳をふさぐ,抱っこを嫌がるなどである。その一方で注射を痛がらないなど,感覚の鈍麻を示すこともある。

    共感の乏しさ:喜怒哀楽といった感情を他者と共有することの乏しさを言う。

    コミュニケーション障害:言語的あるいは非言語的な意思疎通性の障害を言う。いわゆる,やり取りができない。言語発達の遅れだけでなく,エコラリアといって相手と同じ言葉を繰り返すものや,会話が成立しにくく,一方的に自分の話したいことを話すなども含んでいる。

    【検査所見】

    本疾患を特定する遺伝学的,生化学的,神経生理学的検査等は確立していない。

    診断:ICD-10では,①社会性の障害,②コミュニケーションの障害,③限定された反復的な行動様式,の3つのカテゴリーに属する症状を,行動観察によってあるいは養育者からの聞き取りによって確認して行う。

    DSM-5では,前述の①と②が合わさった社会的コミュニケーション障害と③の,2つのカテゴリーで症状の有無を確認する。

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