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救急外来の薬物検査で覚醒剤などの陽性反応が出た場合にどう対処するか?【届出義務と守秘義務,個人情報保護の関係】

No.4854 (2017年05月06日発行) P.64

樋口範雄 (武蔵野大学法学部特任教授)

登録日: 2017-05-03

最終更新日: 2017-04-27

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  • 救急外来で意識障害の患者の原因検索目的で,本人の同意は得られないで家族の同意のみで薬物検査を行うことがあります。
    その場合,睡眠薬と同時に覚醒剤や麻薬なども検査しますが,覚醒剤や麻薬に陽性反応が出た場合,警察や家族に言うべきでしょうか。個人情報漏洩が問題になりますか。

    (長野県 K)


    【回答】

    結論から申し上げますと,麻薬や覚醒剤の反応が出た場合,その事実を警察に通報することは,個人情報保護法上の問題とはなりません。ただし,法律上は麻薬と覚醒剤で異なる取り扱いをしており,また家族に知らせることは別論になりますので,以下,説明します。

    (1)警察への届出

    麻薬については,法律上明確に,医師は届出をしなければなりません。麻薬及び向精神薬取締法第58条の2に「医師は,診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは,すみやかに,その者の氏名,住所,年齢,性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない」とあり,第71条に違反した者は6月以下の懲役や罰金刑に処すとありますので,医師が届出を怠ると犯罪とされます。

    もっとも,この法律は都道府県知事(薬事行政を管轄する部署,薬務課)への届出を義務づけており,警察への届出は別とも考えられます。ただし,刑事訴訟法第239条第1項は「何人でも,犯罪があると思料するときは,告発をすることができる」と定めており,やはり警察への届出が個人情報保護法違反になるとは考えられません。

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