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診療放射線技師による問診は可能か?

No.5094 (2021年12月11日発行) P.50

吉岡譲治 (アンカー法律事務所弁護士)

登録日: 2021-12-08

最終更新日: 2021-12-07

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診療放射線技師が法律上行うことができる問診の範囲についてご教示下さい。一般的には,放射線使用に関しての妊娠の有無,MRI前の手術歴確認や金属の確認,造影検査前の副作用の経験・喘息やアレルギーの既往や腎機能の確認などについては,診療放射線技師が問診していると思われます。この一般例に該当しないこと(患者の病状や既往歴,家族歴など)を問診することは可能でしょうか。(岡山県 F)


【回答】

【医師の具体的な指示の下に行い,医師による確認等がある場合,直ちに違法とは言えないと考えられる】

(1)医行為と問診

医師法第17条は,「医師でなければ,医業をなしてはならない」と定めています。この条文は,医師の業務独占を規定したものです。ここに言う「医業」は,「医行為」と「業」にわけて理解されています。

「医行為」とは,「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし,又は危険を及ぼすおそれのある行為」(東京地方裁判所平成14年10月30日判決,同平成9年9月17日判決など)を言います。

「医行為」は,一般的には診療(行為)と呼ばれています。診療は,診察・診断・治療という一連の流れに沿って行われるのが通常です。診察は病気の有無や病状などを判断するために,医師が患者の体を調べたり,質問をしたりすることです(デジタル大辞泉)。ここに言う「質問」が「問診」に該当することになります。したがって,「問診」は「医行為」のうち診療の一内容ということができます。

最高裁判所(昭和48年9月27日判決,以下「A判決」)は,断食道場が,断食道場の入寮者に対し,いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的,入寮当時の症状,病歴等を尋ねた行為は,それらの者の疾病の治療,予防を目的とした診察方法の一種である問診に当たるとしています。

(2)医師の問診と診療放射線技師(以下,技師)の問診

①問診の目的・趣旨

医師が問診を行うのは,「患者の疾病の治療,予防を目的」としています(A判決)。言い換えると,診断を下し適切な治療方法や治療内容を判断し確定するために行われるのが問診です。

検査についても,たとえば磁気共鳴画像診断装置等を用いて行う検査では,適切な検査や検査内容を確定するために問診は必要です。CT検査においては,貴金属類等のチェック,植込み型デバイスのチェック,糖尿病薬内服の有無,アレルギーや喘息の有無,造影剤副作用の既往などを問診によって聴き取ります。

②技師の問診

技師は,診療の補助として磁気共鳴画像診断装置を用いて行う検査が認められています(診療放射線技師法第24条の2)。そして,検査も診察の一種であることを考えると技師にも問診が認められているものと理解されます。ただ,その場合の問診の範囲,内容はおのずから医師とは異なり,主として検査行為に関連するものに限定されると考えられます。

厚生労働省の医政局長通知(平成22年4月30日)では,技師について「放射線検査等に関する説明・相談を行うこと」を積極的に活用することが望まれるとしています。問診については明確に記載はありませんが,それは当然にできることが前提になっているからと思われます。「説明」は検査について患者に理解してもらうことと患者の自己決定権を充足するために行われるものです。実際の医療現場では,問診とこの説明は明確に区別されることなく行われているようです。しかし,それぞれの目的・趣旨の違いは意識しておく必要があります。

(3)医師が行う問診を技師が行うことについて

ご質問の「患者の病状や既往歴,家族歴など」は,通常は医師が適切な診断,治療を判断し確定するために行うものです。これを医師以外の医療従事者が行うことが可能かという点が今回のご質問の趣旨と理解しています。

医行為には,医師しか行ってはならない「絶対的医行為」と,医師以外の医療従事者が行える「相対的医行為」があります。相対的医行為は,看護師の業務である「診療の補助」行為にほぼ該当します。絶対的医行為と相対的医行為の区別の基準は必ずしも明確ではありませんが,高度な医行為,医的侵襲性が大きい医行為などが前者に該当します。

問診は,それ自体侵襲性があるものではなく,高度な医行為にも該当しないと思われます。したがって,医師以外の医療従事者によって行うことは可能です。実際上も,看護師が医師に代わって問診を行うことは広く行われています。病院によっては「問診室」を設置し,そこで看護師によって問診を行っているところもあります。

では,技師が看護師のように広く問診を行うことは認められるでしょうか。看護師は,相対的医行為を広く認められています。これに対して,技師の場合は相対的医行為のうち診療放射線技師法で定められた行為のみが認められています。したがって,技師の問診は基本的には同法で認められた行為に必要な範囲に限定されます。

ただ,「医師の手足としてその監督監視の下に,医師の目が現実に届く限度の場所で,患者に危害の及ぶことがなく,かつ,判断作用を加える余地に乏しい機械的な作業を行わせる程度」の行為についてであれば無資格者を医療補助者として使用することができるとする裁判例があります(東京高等裁判所平成元年2月23日判決)。

上記裁判例を勘案すると,医師が行う問診を医療の有資格者である技師に行わせることが直ちに違法とは言えないと考えられます。もちろん医師の具体的な指示の下に行い,医師による確認等が行われる必要はあります。

【回答者】

吉岡譲治 アンカー法律事務所弁護士

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