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小脳橋角部腫瘍[私の治療]

No.5168 (2023年05月13日発行) P.54

大石直樹 (慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室准教授)

登録日: 2023-05-10

最終更新日: 2023-05-09

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  • 小脳橋角部腫瘍の約80%を聴神経腫瘍が占め,ついで髄膜腫がみられる。聴神経腫瘍は前庭神経に生じる神経鞘腫であり,主に難聴,耳鳴,めまいなどの蝸牛前庭症状を初発症状とする。発生頻度は100万人当たり約20人である。

    ▶診断のポイント

    聴神経腫瘍における難聴は,急性感音難聴として発症する例と,発症時期が明らかでないまま進行性難聴を呈する例とがみられる。急性感音難聴の中で聴神経腫瘍の診断に至る例は約3%程度と推定されている。聴力型は,急性難聴で発症した症例の中では谷型が最も多くみられ,高音漸減型が続き,非突発難聴例では高音障害型や水平型(皿型)が多い。感音難聴症例におけるスクリーニング目的のMRI撮影基準として,2つ以上の連続する周波数における10dB以上の左右差,1つの周波数における15dB以上の左右差,などが提唱されている。めまいを主訴とするのは約10%で,反復性のめまい,進行性難聴合併症例ではMRI撮影は必須である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の選択肢は,経過観察,手術そして放射線照射である。QOLの観点からは,治療法間での優劣はみられない。治療の選択は一般的には年齢,腫瘍径,腫瘍の増大速度,聴力,患者の希望,合併症などにより判断される。基本的な考えは,大型の腫瘍を除いた多くの症例において,まずは経過観察を選択し,半年~1年に1度のMRI撮影を行って,腫瘍の増大傾向があれば積極的治療(手術ないし放射線照射)を考慮する。増大傾向がなければ経過観察を継続する。聴力の悪化が見込まれる例では,聴力温存手術を考慮する。

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