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中耳の急性炎症の手術適応と脳神経外科との連携について

No.5219 (2024年05月04日発行) P.49

折田頼尚 (熊本大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

萩森伸一 (大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2024-05-02

最終更新日: 2024-04-26

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  • 近年,中耳の急性炎症で救急外来を受診する患者は減少傾向ですが,それでも時に耳介が聳立していたり,硬膜外膿瘍がみられたりする症例もあります。チュービングや耳後部皮膚切開だけで十分排膿できたと思われる症例もありますが,どのような場合に緊急で乳突洞削開や脳神経外科との合同手術までされるでしょうか。
    耳鼻科,脳神経外科の手術の順番,抗菌薬の使用法も含め,大阪医科薬科大学・萩森伸一先生にご解説をお願いします。

    【質問者】折田頼尚 熊本大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授


    【回答】

    【抗菌薬で制御困難な急性炎症・頭蓋内合併症には脳神経外科と連携して手術を行う】

    抗菌薬の進歩とともに急性中耳炎は良好に制御されるようになっています。しかし,ムコイド型肺炎球菌による中耳炎(ムコーズス中耳炎)では炎症が高度で,しばしば内耳障害や急性乳様突起炎,側頭部皮下膿瘍をきたします。ムコイド型肺炎球菌の多くはペニシリン感受性ですので,ペニシリン系を中心とする抗菌薬投与を開始します。セフェム系やキノロン系抗菌薬も使用しますが,効果に乏しい場合があるので注意が必要です。さらに,鼓膜切開術や耳後部皮下膿瘍の穿刺・切開による排膿,抗菌薬に加えステロイドを投与することで改善します。緊急で乳突洞削開術を行う例はきわめて稀です。最近,内耳炎を伴う急性中耳炎の起炎菌として,以前は少なかった溶連菌がしばしば検出され,今後の動向に注意が必要です。

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