株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

腸回転異常症[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.46

渡井 有 (昭和大学医学部外科学講座小児外科部門教授)

登録日: 2022-05-07

最終更新日: 2022-05-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 中腸は,上腸間膜動脈に支配される十二指腸から横行結腸の口側約2/3までの部分であり,胎生約10週に回転しながら腹腔内に還納し,後腹膜へ固定される。腸回転異常症は,この中腸の回転・固定・間膜癒合に異常をきたした疾患である。Ladd靱帯によって上腸間膜動脈の腸間膜根部が狭小・捻転するため,診断が遅れると上腸間膜動脈領域の腸管が絞扼・壊死となる。腸回転異常症患児の80%以上は新生児期に発症する。迅速な診断と緊急手術が,本疾患取り扱いの要点である。

    ▶診断のポイント

    新生児の胆汁性嘔吐・下血では,まず本症を疑い迅速に診断を進める。

    入院後,経鼻胃管による減圧と輸液を行い,診断のため腹部超音波検査を行う。先行して消化管造影検査を行うと,下位腸管にガスが流れ診断が困難となるため超音波検査を優先する。超音波血流検査で,上腸間膜動脈(SMA)を軸にして上腸間膜静脈(SMV)が渦状に描出されるwhirl pool signや,SMAとSMVの位置関係が逆転するSMV rotation signを認めれば確定診断となる。なお,SMAとSMVが前後に並ぶ場合でも,15~20%に腸回転異常が認められるとされるため,注意が必要である。腹部超音波検査で本症の診断がついた場合には緊急手術を行う。

    超音波検査で腸回転異常症を除外できない場合や,時間的余裕がある場合には上部消化管造影・下部消化管造影を施行する。上部消化管造影検査では,十二指腸での通過障害,十二指腸・空腸のcorkscrew sign,Treitz靱帯の形成がない,ことで診断できる。しかし,腸回転異常症でも8~17%は上部消化管造影検査で正常に見えるという報告や,消化管造影で典型画像を示すのは43%という報告1)もあり,注意が必要である。下部消化管造影検査では,回盲部の位置異常や横行結腸の狭窄像が本症の診断根拠となる。

    超音波診断・消化管造影検査が可能な医師が不在の場合には,腹部CTも考慮される。急性期の脱水の評価を待つ時間的余裕がない場合には,腎負荷になる造影剤は使用しない。また,小児外科医が不在の施設で当疾患が否定できない場合には,夜間であっても小児外科専門施設へ搬送する。

    残り945文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top