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筋強直症候群 (筋強直性ジストロフィー,ミオトニア)[私の治療]

No.5028 (2020年09月05日発行) P.45

樋口逸郎 (鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻基礎理学療法学講座前教授)

登録日: 2020-09-05

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  • 筋強直症状(筋収縮後の弛緩が困難)を呈する疾患群で,筋力低下および筋萎縮を伴う筋強直性ジストロフィー(DM)と,先天性ミオトニアなどの非ジストロフィー性ミオトニアに分類される。

    ▶診断のポイント

    ミオトニアの臨床症状は,手を強く握った後開きにくい(把握ミオトニア),ハンマーで母指球などを叩くと筋が長く収縮する(叩打ミオトニア)などがある。筋電図で針を筋線維に刺入したときに興奮が持続するミオトニア放電が診断に有用である。

    筋強直性ジストロフィーは常染色体優性遺伝でミオトニア,進行性の筋力低下および筋萎縮,多臓器障害(白内障,不整脈,呼吸障害,糖尿病,脂質異常症,高次脳機能障害,消化器症状など)が主症状で,成人では最も頻度が高い筋ジストロフィーである。西洋斧様の顔貌,前頭部脱毛は診断に役立つ特徴である。わが国の筋強直性ジストロフィー症例の大部分は,DMPK遺伝子のCTG繰り返し配列伸長で生じる1型(DM1)であり,RNAレベルのスプライス異常が分子病態と考えられている。出生時から発症する先天性筋強直性ジストロフィーは母親由来のことが多く,出生直後にはミオトニアはなく重篤なfloppy infantの症状を呈する。

    非ジストロフィー性ミオトニアには,Clチャネル変異による先天性ミオトニア,Naチャネル変異による先天性パラミオトニアおよびNaチャネルミオトニアなどがあり,非進行性のことが多い。先天性ミオトニアには,常染色体劣性遺伝のベッカー病と常染色体優性遺伝のトムゼン病があり,ミオトニアや筋肥大はベッカー病のほうが高度である。先天性ミオトニアのミオトニアは,反復運動で軽減されるが,先天性パラミオトニアでは逆に増強し,それに続く弛緩性脱力発作を生じる。また,先天性パラミオトニアは,寒冷により誘発される筋のこわばりを特徴とする。Naチャネルミオトニアは,運動やカリウムを多く含む食物摂取後の筋のこわばりを特徴とする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    筋強直性ジストロフィーでは,多臓器障害による各種合併症の予防と治療が重要である。特に,生命予後に直結する不整脈の早期発見と治療,誤嚥の予防,呼吸不全の治療は重要である。筋強直性ジストロフィーでは,肺活量が保たれている時期から中枢性呼吸障害による低酸素血症がみられることがあり,また,睡眠時無呼吸も高頻度である。周産期や周術期の異常も多く,注意が必要である。リハビリテーションによる筋力の維持や関節拘縮予防,呼吸理学療法,病状に応じた装具療法も必要である。

    非ジストロフィー性ミオトニアは一般的に非進行性とされているが,軽度の筋力低下を呈する例も存在する。稀ではあるが,乳幼児期に強度のミオトニアにより呼吸不全や哺乳障害をきたす例もあり,注意を要する。

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