株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

皮膚科領域における遺伝子診断の現状と今後のあり方

No.4981 (2019年10月12日発行) P.59

玉井克人 (大阪大学大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座教授)

中野 創 (弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座准教授)

登録日: 2019-10-11

最終更新日: 2019-10-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 遺伝性皮膚疾患の診療において,遺伝子診断は疾患病型の確定診断を得る意義のみならず,臨床的予後や遺伝的予後の判断,治療法の選択などにおいて,今後もますます重要性を増す診療業務であると思います。しかしその一方で,得られた遺伝子診断結果が過去に報告された遺伝子変異であった場合は学会や論文で報告する価値は薄れることとなり,遺伝子診断業務が進めば進むほど,その学術的意義は減少するというジレンマが生じると予想します。皮膚科領域における遺伝子診断業務の重要性と今後の展望につきまして,是非この分野のエキスパートである弘前大学・中野 創先生にご解説を頂きたいと思います。

    【質問者】

    玉井克人 大阪大学大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座教授


    【回答】

    【同じ遺伝子変異が複数同定されても,臨床的に有意義なデータになりうる】

    皮膚科領域で取り扱う遺伝性皮膚疾患は,皮膚症状を主体として主に皮膚科で診療される疾患(フェルナー型掌蹠角化症など)に加えて,皮膚以外の他臓器にも症状があるために,内科,小児科など他科との連携が必要,あるいは他科で主体的に診療されている疾患(ファブリー病など)も含まれます。したがって,遺伝子診断の対象となる疾患の種類が非常に多いのが特徴です。当施設では遺伝性ポルフィリン症や表皮水疱症を中心に,40種類以上の疾患と60種類以上の原因遺伝子を対象に遺伝子診断を行っています。

    2018年度は遺伝性疾患が疑われた患者およびその家族を合わせて229人の検体について遺伝子変異解析を行いました。その中にはファブリー病が疑われた患者50人が含まれますが,それらはほぼすべて皮膚科以外の科からの依頼です。

    実際に遺伝子診断を行って苦慮する点は,臨床診断から推定された原因遺伝子に,発症の原因となる遺伝子変異が見つからない場合です。この場合にはもう一度振り返って臨床診断を確認することになりますが,限られた臨床情報から臨床診断を決めるのは容易でないことがわかります。逆に言えば,臨床診断を確定できないために,遺伝子診断で最終診断を決定したいというニーズがあるのが現状と思われます。

    残り507文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top