株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

介護療養型老人保健施設や療養病床の常勤医数を維持するには?【常勤医の必要人数,兼務の可否等に関しては,法律を確認するか,保健所等監督官庁に相談】

No.4908 (2018年05月19日発行) P.60

小島崇宏 (大阪A&M法律事務所 医師・弁護士)

登録日: 2018-05-17

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

数十年にわたり,週1回の非常勤医師として勤務していた60床の慢性期病院(介護療養型老人保健施設)の院長が急逝しました。その病院から「常勤医の人数が不足しています。このままでは看護師やコメディカルの人たちが失職するので,ぜひ,常勤医になって下さい」と頼まれました。しかし,現在,他のクリニックの常勤内科医もしており,そちらにも迷惑をかけたくありません。
(1)慢性期病院の場合でも,病床数に応じて常勤医の必要人数があるのでしょうか。あるならば何床に対して何人でしょうか。
(2)現在のクリニックは常勤のまま,慢性期病院で常勤医と同様の勤務時間(週4日半)を当直を含めて満たすようにすれば,当面は慢性期病院の「みなし常勤医」として認めてもらうことはできないでしょうか。もちろん社会保険その他はなしで,新しい常勤医が見つかるまでの手段としてです。

(兵庫県 I)


【回答】

(1)常勤医の必要人数

病床数に応じた常勤医の必要人数についての規定があるかどうかについてですが,規定はあります。慢性期病院という表現は法律上の用語ではなく,ご質問の中に出てくる介護保険適用の「介護療養型老人保健施設」と医療保険適用の「療養病床」が想定されますが,それぞれ,別の規定がなされています。

まず,前者については,入所者100人以下の場合は常勤医師1名が必要です(介護保険法第97条第2項,平成11年厚生省令第40号「介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準」第2条第1項第1号)。他方,後者については,3名以上の常勤医師が必要です(医療法第21条第2項第1号,医療法施行規則第19条第1項第1号)。

(2)兼務の可否

こちらについても,介護保険適用の「介護療養型老人保健施設」か医療保険適用の「療養病床」かのいずれかで回答が異なってきます。

まず,後者についてですが,医師3名以上の換算の仕方としては,就業規則の規定による勤務時間のすべてを勤務したものを常勤として計算し(ただし,医療機関規定の勤務時間が32時間未満の場合は32時間以上勤務が常勤),非常勤医師の勤務時間による合算も認められます(「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」別紙参照)。そして,この場合に常勤医師が,他のクリニックの常勤医と兼務できるかについてですが,上記要綱からしますと,就業規則の規定の仕方によっては認められるケースもあると考えます。もっとも,この場合でも,勤務先が兼職を認めているのか,認めているとしても長時間労働になり業務に支障をきたさないかなど,勤務先との調整が必要になります。

次に,前者についてですが,後者とは違い「介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準」において,「介護老人保健施設の従業者は,専ら当該介護老人保健施設の職務に従事する者でなければならない」(第2条第4項),「介護老人保健施設の管理者は,専ら当該介護老人保健施設の職務に従事する常勤の者でなければならない」(第23条)と規定されており,一部例外規定もありますが,単に常勤ということだけでなく,専従であることも求められています。したがって,介護保険適用の「介護療養型老人保健施設」の常勤医師が,他のクリニックで勤務をすること自体が,常勤,非常勤を問わず難しいと考えます。

いずれにしても,医療機関等の運営の根幹に関わる問題ですので,管轄の保健所等監督官庁に確認し,慎重に進められることをお勧めします。

【回答者】

小島崇宏 大阪A&M法律事務所 医師・弁護士

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top