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婦人科がん症例における安全かつ有効な腹腔鏡下手術【拡大視効果があり,深部到達能が高いため有用。エビデンスの集積が待たれる】

No.4898 (2018年03月10日発行) P.56

上田 豊 (大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 学部内講師)

金尾祐之 (がん研有明病院婦人科副部長)

登録日: 2018-03-11

最終更新日: 2018-03-06

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  • 近年,腹腔鏡の技術革新で,これまでは手術が施行されてこなかった進行・再発婦人科がん症例においても,腹腔鏡下に手術が行われる症例が出てきています。婦人科がん症例における,解剖学に立脚した安全かつ有効な腹腔鏡下手術について,がん研有明病院・金尾祐之先生にご教示頂きたいと思います。

    【質問者】

    上田 豊 大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 学部内講師



    【回答】

    根治手術後照射野内再発子宮頸癌においては手術による完全切除が最も長期生存が期待できる治療であるものの,根治手術,放射線療法に伴う線維化,癒着のため手術は一般に困難とされています。仮に完全切除を達成したとしても高い合併症率(45~65%),高い周術期死亡率(2~14%)が報告されており,根治手術後照射野内再発子宮頸癌に対する手術療法は,比較的安全に手術が施行できると考えられる中央再発症例に限って骨盤内臓全摘術などが行われているのが現状です。

    一方,側方再発(壁側再発)症例には手術適応がないとされ,側方再発に対する手術療法は一般的に禁忌とされています。その理由は,高い周術期合併症率であるにもかかわらず切除断端陽性率が高いことにあります。

    Juradoらの照射野内再発子宮頸癌48例の検討をみても,腫瘍完全切除率(10mm以上のfree mar­ginをもって切除可能であった症例)は中央再発症例で65%(13/20),側方再発症例で28.6%(8/28)で,側方再発症例での腫瘍完全切除率が有意に低いとされています。ところが,腫瘍を完全に切除可能であった症例の疾患特異的10年生存率は中央再発群で45.8%,側方再発群で33.3%であり,有意差を認めず同等であるとの結果が示されています。また彼らは報告の中で,合併症率は中央再発群で65%,側方再発群で73.3%と有意差を認めなかったことから,完全切除可能かどうかの適応を見きわめることができれば決して側方再発症例に対する手術療法は禁忌とは言えない,と結論づけています。

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