安倍晋三内閣は2月16日、「高齢社会対策大綱」(以下、「大綱」)を閣議決定しました。「大綱」は高齢社会対策基本法(1995年)第6条の規定に基づき、1996年に初めて作成され、2001年、2012年に2回見直しが行われ、今回は6年ぶり、3回目の見直しです。本稿では、今回の「大綱」の内容を、前回の6年前の民主党政権時の「大綱」との異同に注目しながら検討します。
今回の「大綱」は「目的及び基本的考え方」、「分野別の基本的施策」、「推進体制等」の3部構成で、基本的施策は、以下の6つの柱立てです: 就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、研究開発・国際社会への貢献等、全ての世代の活躍推進。この構成も大枠では、前回と同じです。細目も大枠では前回と同じで、しかも前回とまったく同じ表記が使われている細目も少なくありません。
私は、2009年の民主党政権成立前後から、日本を含めた高所得国では、医療・社会保障政策の根幹は政権交代でも変わらないと考えています(『民主党政権の医療政策』勁草書房,2011,14-15頁)。「大綱」でもこの経験則を再確認できました。
ただし、民主党政権と自民党政権には基本的スタンスの一部に大きな違いもあります。
今回の「大綱」では、以下の「3つの基本的考え方」が示されています。(1)年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す。(2)地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る。(3)技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。
それに対して、前回の基本的考え方は6つでした。そのうち、(1)「『高齢者』の捉え方の意識改革」と(3)「高齢者の意欲と能力の活用」と(6)「若年期からの『人生90年時代』への備えと世代循環の実現」は今回「大綱」の(1)に統合されたと見なせます。前回の(4)「地域力の強化と安定的な地域社会の実現」と(5)「安全・安心な生活環境の実現」は、今回「大綱」の(2)に統合されたと見なせます。