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皮膚疾患におけるペリオスチン【炎症性サイトカインの産生を促進し,疾患の増悪と慢性化,腫瘍創部転移を誘導】

No.4897 (2018年03月03日発行) P.50

増岡美穂 (佐賀大学皮膚科)

登録日: 2018-03-04

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ペリオスチンは,骨芽細胞で強く発現している蛋白質として同定され,細胞外マトリックス蛋白質のひとつであり,組織の構造維持,線維化に関与している。また,マトリセルラー蛋白質として作用し,細胞表面の受容体に結合し,細胞内にシグナルを伝達することで,細胞の活性化に関与していることが知られている。

筆者らは,ペリオスチンがアトピー性皮膚炎の慢性化に重要な役割を果たしていることを明らかにした1)。アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織では,ペリオスチンは真皮部分に強く沈着し,沈着の程度と臨床的な皮膚炎の重症度とに相関がみられた。血清中のペリオスチン値は,健常人に比べアトピー性皮膚炎患者で上昇していた。さらに,モデルマウスや細胞培養実験を用いて解析し,ペリオスチンはインテグリンを介してケラチノサイトを刺激し,別の炎症性サイトカインの産生を誘導することで,アトピー性皮膚炎の増悪と慢性化において重要な役割を担っていることを明らかにした。

その他,強皮症患者では,血清ペリオスチン値が皮膚硬化の重症度と相関し皮膚硬化の進行のバイオマーカーとなる2)。また,悪性黒色腫では,ペリオスチンが創部転移を誘導する重要な因子となっていることが示された3)。今後も,様々な皮膚疾患におけるペリオスチンの役割を解析することで,病態を解明し,治療標的としても期待できる。

【文献】

1) Masuoka M, et al:J Clin Invest. 2012;122(7): 2590-600.

2) Yamaguchi Y, et al:Br J Dermatol. 2013;168 (4):717-25.

3) Fukuda K, et al:PLoS One. 2015;10(6):e0129704.

【解説】

増岡美穂 佐賀大学皮膚科

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