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炎症性腸疾患の抗TNF-α抗体治療における薬物モニタリング【抗TNF-α抗体の薬物モニタリングの早期普及が必要】

No.4897 (2018年03月03日発行) P.49

西田淳史 (滋賀医科大学消化器内科)

安藤 朗 (滋賀医科大学消化器内科教授)

登録日: 2018-03-01

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わが国では,2002年にキメラ型抗TNF-α抗体製剤のインフリキシマブ(IFX)が導入され,10年に完全ヒト型抗TNF-α抗体製剤であるアダリムマブ(ADA)が導入され,炎症性腸疾患の治療ストラテジー,治療目標が大きく変化した。その強力な治療効果から,既存の薬剤では到達困難であった「内視鏡的粘膜治癒(mucosal healing)」が治療ゴールとして設定可能となり,抗TNF-α抗体での長期寛解維持ができる症例も認められる。その一方で,抗TNF-α抗体の効果が経時的に十分得られなくなる,二次無効(loss of response:LOR)の症例も認められる。

抗TNF-α抗体製剤の維持療法における有効性は血中トラフ値に依存することが報告されている。さらに,抗TNF-α抗体製剤の血中トラフ値は臨床効果だけでなく,内視鏡的な改善度や炎症マーカーの改善などとも相関することが示されている。

当院では,抗TNF-α抗体製剤や抗TNF-α抗体製剤に対する抗体の測定をELISAを用いて行い,LORに至った場合の治療アルゴリズムを作成している1)2)。欧米では抗TNF-α抗体製剤や抗TNF-α抗体製剤に対する抗体の濃度測定が可能となっており,治療薬物モニタリングの結果が臨床にフィードバックされている。わが国においても,抗TNF-α抗体製剤のモニタリングが早期に普及することが必要と考えている。

【文献】

1) Imaeda H, et al:J Gastroenterol. 2012;47(2): 136-43.

2) Imaeda H, et al:J Gastroenterol. 2014;49(1): 100-9.

【解説】

西田淳史*1,安藤 朗*2 *1滋賀医科大学消化器内科 *2同教授

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