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特定疾患療養管理指導のカルテの適切な記載法は?【SOAPに則った記載を心がける。行動変容に至るにはラポールの確立等が重要】

No.4894 (2018年02月10日発行) P.59

平山陽子 (王子生協病院総合診療科)

登録日: 2018-02-08

最終更新日: 2018-02-06

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カルテへの特定疾患療養管理指導の適切な書き方について,実例とともにご教示下さい。

(埼玉県 T)

「特定疾患療養管理料」は,生活習慣病などの厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者について,プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものです1)。診察に基づき,計画的な診療計画を立て,その計画に基づき,服薬,運動,栄養等の療養上の管理を行った場合に,月2回算定できます。管理内容の要点をカルテに記載することが算定の用件となっています。

個別指導の内容を見ると,算定の上で重要なポイントは主病を明確にすること,患者の個々に応じた内容を記載することとなっています。毎回同じ指導内容の印を押したり(紙カルテの場合),いくつかの選択肢の中から選ぶだけでは個別性があるとは言えません。

患者の立場から言うと,様々な「行動変容」を求められていることになります。生活習慣の改善は単に医師が「指導」しただけではなかなか難しいのが実際です。

保険算定上もクリアでき,患者の行動変容にもつなげるためにはどうすればよいのでしょうか。以下に筆者のカルテを紹介します(実際の症例をもとに内容を変更しています)。

【症例】
69歳,女性(再診)。糖尿病(主),高血圧,脂質異常症。2016年10月に健診にて糖尿病を指摘され(HbA1c 9.0%),当院に教育入院。退院後,筆者の外来に通院している。合併症なし,喫煙あり(1日15本×40年間),アルコール飲用なし。

【処方内容】
①メトホルミン(250mg)1日4錠を2回に分けて,②エナラプリル(5mg)1回1錠・1日1回,③プラバスタチン(10mg)1回1錠・1日1回

【経過】2017年9月某日,筆者の外来を再診。

(1)S:subject
体調は変わりなし。ウォーキングを続けている。1日4000~6000歩
運動するとお腹が減ってしまい,つい間食をしてしまう。低血糖は起きていない
2018年の春,娘に孫が産まれるのでそれまでにタバコをやめたいと思っているが,夫との関係でイライラしてしまい,やめられる自信はない

(2)O:object
自宅血圧:120/80mmHg前後,心音:不整なし,肺音:清,体重:60.5kg(BMI 26.8),本日の採血結果:HbA1c 7.3%,血糖235mg/dL

(3)A:assessment
#1糖尿病(主)[2016.10.10初診]
・合併症:なし(最終眼科受診:2017年4月)
・目標HbA1c:7.0%
・目標体重:来年の1月までに58kg
#2高血圧症
#3脂質異常症
#4 smoker:関心期

(4)P:plan
T-Plan:処方継続
D-Plan:毎回診察前にHbA1c,血糖採血あり
E-Plan:行動変容の課題
・運動の習慣をつける(1日4000歩以上):達成できている→賞賛し,継続を促す
・間食を適量にする(1日100kcal以内):間食の内容について記録してもらう。体重測定を励行
・禁煙:関心期→タバコをやめるメリットについて考えてもらう。禁煙外来について情報提供
注:下線部は特定疾患療養管理料に関係する部分

Sには患者の会話の中から,行動変容の達成度や準備状態がわかる内容を記載します。

Aにはプロブレムリストと治療の目標を記載しています。SMARTな目標設定(表1)を参考に患者と相談して目標を立てていきます。



PはT-Plan(治療プラン)とD-Plan(診断・検査のプラン),E-Plan(患者教育プラン)にわかれており,特定疾患療養管理料の根拠となる内容は主にE-Planに記載します。

ところで,行動変容については医師からの指導(情報提供)は過程の一部にすぎません。行動変容においては,医師と患者の間でラポールが確立していることが前提で,アジェンダセッティング(行動変容の課題を患者と医師で話し合って決めること)を行います。その上で準備段階を評価します。

患者がどの準備段階にいるかを知るためには図1「変化のステージモデル」が参考になります2)〜4)。準備段階が低い場合は,重要性の認識や本人の自信を評価します。重要性が低い場合は重要性を認識してもらう言葉かけ(例:「ご家族の喫煙はお孫さんの喘息や中耳炎のリスクになります」)を行い,自信がない場合は自信を高める言葉かけ(例:「ウォーキングは続けられてますから,禁煙もきっとうまくいきますよ。お薬を使えば成功率はもっと上がります」)を行います。変化を焦らないことがコツで,時には待つことも必要になります。


いかがでしたか? 行動科学の視点で行うと特定疾患管理も具体的で実効性のある内容になります。行動変容のいろいろな手法について知りたい場合は文献3)をお勧めします。いろいろな手法が網羅的に書かれていて簡単に読めます。ぜひ,明日から診療に取り入れてみてください。

【文献】

1)東京保険医協会:保険点数便覧 2016年4月改定. 2016.

2)ステファン・ロルニック, 他(地域医療振興協会公衆衛生委員会PMPC研究グループ, 訳):健康のための行動変容─保健医療従事者のためのガイド. 法研, 2001.

3) 松本千明:医療・保健スタッフのための 健康行動理論の基礎─生活習慣病を中心に. 医歯薬出版, 2002.

4) 松下 明:週刊医学界新聞. 第2886号, 2010年7月5日.

【回答者】

平山陽子 王子生協病院総合診療科

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